ライトウェイのミニベロ「グレイシア」のハンドルを「マルチポジションハンドル」に交換しました。バタフライハンドル、トレッキングハンドルとも呼ばれ、ツーリング性能が期待できるとのこと。このハンドルを導入した理由や実際に使ってみた感想など以下に書いていきます。
マルチポジションハンドル(バタフライハンドル)とは?
マルチポジションハンドルは上の画像を見た通りの珍妙な形状をしたハンドルです。バタフライハンドル、トレッキングバーなどの呼び方もあります。今回はBBB「トレッキングマルチバー」を使用していますが、Amazonなどで探すと微妙な形状違いでたくさん出てきます。
マルチポジションハンドルというとSURLYのモロコバー・コーナーバー、アデプトのオーバーハングバーが想起されますが、今回のタイプの方がはるかに古い存在です。日本ではほとんど見かけませんが海外ではツーリング用の自転車に採用するようです。私もこのハンドルバーの存在を知ったのは海外からツーリング中だった方の自転車でした。
このハンドルバーは名前の通り、フラットハンドルベースながら手を置く位置が複数取れます。また、握る箇所以外にもハンドル取り付ける角度、向き、ブレーキレバーとシフターの取り付け位置もある程度の自由が効きます。ハンドルの端っこが「しなる」ことで手に伝わる振動を緩和するということで、ツーリングなど長丁場のサイクリングに向いているということらしいです。
前から興味はあったハンドルですがニッチな存在故か情報があまり見つからず手探りでカスタムを進めました。今回は特に『たびチャリ!』というサイトの「マルチポジション(バタフライ)ハンドルってなに?特徴は?」という記事が非常に参考になり助かりました。この場を以って御礼申し上げます。
導入理由
かつてブルホーンバーを導入した時とほぼ同じような理由で、長距離・長時間ライドで手が痛くなるのを少しでも改善したかったからです。
今回は腕というよりはライド後の手のひらが痺れるように痛くなるのを改善したかったというのが大きな理由。「しなる」ことで振動を緩和するとの触れ込みなのでそこに期待しての選択。なによりも握り位置を最低2箇所取れるというのも大きいです。また、後述しますが費用もドロップハンドル化より安く抑えることができるというのもあります。
あと、これは私の独特な捉え方・理由になりますが「手の防御性向上」ということも挙げられます。ドロップハンドルやフラットハンドル・ブルホーンハンドルも「手が剥き出し」になっているのが前から気になっていたのです。もっと細かく言えば「手の甲」が外を向いて無防備ということ。うまく言えませんが何となく不安と言いますか、安全性の観点から嫌だなと思っていた次第。
気を付けてはいますが万が一の落車や物との接触時に手を守るものが無いというのは不安です。バイクだと手を守るガードパーツが付いていますが、それに当たるものが何かないかなと思っていたところ、今回のハンドル前方部分でその役割を賄えそうと考えたのです。実際に機能するか未知数ですが気休め程度にはなるかと。さらにこの形状なのでドロップハンドルにおけるブレーキレバー、フラットハンドルの端っこのように物と当たってもお互い傷つけにくい形状だと思いました。SURLYのモロコバー・コーナーバー、アデプトのオーバーハングバーが候補から消えたのは費用以外にこれが理由です。(特にコーナーバーは形状・角度からブレーキレバー破損リスクは高いと思う)
以上のような独特な理由込みでマルチポジションハンドルを導入しました。
今回のカスタム概要
長い前振りでしたが具体的なカスタム内容について。今回はマルチポジションハンドルをはじめとしたハンドル周りのカスタムが中心です。出来上がった姿は上の画像の通り。もっと頭でっかちな主張の激しいものになるかと思いましたが、事前の予想よりスッキリした見た目となりました。見た目はブロンプトンのPハンドルを水平に倒したような見た目です。ちなみにこれで完成ではなく、しばらくしたら色々と手直しをする予定です。情報が少ない中での手探りでのカスタム故にすでに失敗したと思う箇所がいくつかあります。これについては後述。
ハンドルバーはBBB「トレッキングマルチバー」を使用。他メーカーからも類似品が多数出ていますが、ハンドル幅が広すぎないものが良かったので、比較して幅が狭いBBBのハンドルバー(横幅570mm)を選択。
シフターはダイアコンペ「サムシフター」を使用。こちらは無段階でレバーが動くノンインデックスタイプというもの。無段階なのでちょうど良い位置を探りながらシフトチェンジするイメージです。使っていればすぐ慣れるので操作は難しくありません。
ブレーキレバーは元々所有していた補助ブレーキレバーを流用しました。補助ブレーキ用のレバーですがブルホーンハンドルで使用されることもある製品です。通常のブレーキレバーだとワイヤーがステム周辺で混線するかと思い、ハンドルバーにワイヤーを沿わせるようにルーティングしています。(これは結果的に失敗でしたが)
ハンドル周りと直接関係ありませんがブレーキキャリパーをシマノ「BR-R317」に交換しました。今回のブレーキレバーはロードバイク用とのことで、元から付いていたテクトロ「MD-M280」はマウンテンバイク用なので「レバーの引きしろ」の関係で使えないとのことでした。こういう部分も気にしないといけないのか……。
そのほか、ハンドルの握り部分は「スパカズ」のバーテープを巻いています。BBB純正の「スポンジグリップ」があるので迷いましたがひとまずバーテープにしました。バーテープの中では厚みがある2.5mm厚ですがこのハンドルバーではまだまだクッション性不足です。サイクルグローブがないと長時間は厳しいです。
フラットハンドルより快適
何回か走ってみての感想ですが、一般的なフラットハンドルよりも楽に走ることができていると思います。ハンドルの端がわずかにしなるようで地面からの振動が微々たるものですが軽減されている……ような気がします。
いわゆるサスペンションのように劇的に違いがわかあるものではないので「そんな気がするかなぁ」程度のものです。とは言え、長距離・長時間を走っていればチリも積もればというもので決して馬鹿にはできない差となります。前項で握り部分のクッション性不足と書きましたが、それでも前のようにライド終了後に手のひらが痺れるように痛くなることはなくなったのでそれなりの効果はあると思います。
また、この独特の形状から握る位置が2箇所は取れるので、同じ位置で固定されず手の疲労軽減が望めます。これはドロップハンドルと似たような機能性です。無理すれば前方部分も握れますが……使うことはないでしょう。
ただし、今回の場合だと前・横の握り位置ではブレーキレバーが操作できません。そのため使用できる場面は極端に限られます。私の使い方だと導入理由のこともあり前は使いません。横は姿勢を変える時にたまに使う程度です。基本はブレーキレバーが付いているホームポジションでの使用です。
あと、乗車ポジションも関係していると思いますが、良くも悪くもハンドルバーが「しなる」ことにより力が伝わりにくくなった感じがします。これは特に登坂時にそういう感触があります。トルクをかけても「フニャァ……」と力が抜けるイメージです。横ポジションで握ると改善されますが、乗り心地(耐振動性)が向上したことによる代償かもしれません。
後述するいくつかの失敗があるにせよ、前から気になっていた手にかかる振動が軽減できているので十分な効果は得られたと言えます。少なくとも元々のフラットハンドルバーよりは快適に使えています。
導入価格はドロップハンドル化より抑えられる
選ぶパーツによりますがドロップハンドル化に比べたら圧倒的に安価に導入できます。私の場合はワイヤーのルーティングやシフター・ブレーキで無駄に費用がかかっていますが、元からのパーツを流用する前提であれば以下の項目くらいで2万円はかからないと思います。
・ハンドルバー代
・シフトワイヤー代
・ブレーキワイヤー代
・バーテープorスポンジグリップ代
・工賃
上記はあくまでポン付けレベルなので実際はステムパーツなどポジション調整に伴う追加費用が必要になるかもしれません。それでもSTIレバーをはじめとするドロップハンドル導入コストよりは安く抑えられるでしょう。「ツーリング機能を向上させたいけどドロップハンドルは高い」という人には良いのかもしれません。
欠点:ハンドル形状ゆえに迷走しがち
このマルチポジションハンドルの欠点は簡潔に言えば「ハンドル形状そのもの」です。元も子もない話ですが、これから挙げる細々とした問題もハンドル形状から起因するものです。
例えば、従来使用していたフロントバッグやステムバッグなどが付けられないということがあります。これはバッグ次第なところがありますがハンドルの形状、ブレーキワイヤーなどが干渉することがあります。私も前から使っていたステムバッグ、フロントバッグがそのまま付けられなくなり、ステムバッグをフロンドバッグのように無理矢理を取り付けて使用しています。まぁ、これはこれであり。
使用するパーツと取り付け位置も悩みます。これは個人的に一番悩んだ部分で少し失敗したなぁとも思う部分です。使用するパーツと配置によって使い勝手がガラリと変わります。特にブレーキとシフター、ワイヤーの配線はステムやフレームへの干渉、オプション類の取り付けに大きく影響します。あとは「見た目」ですね。
「乗車ポジション」の調整も手間取ることでしょう。先述の通りマルチポジションハンドルは取り付け方の自由度が高いです。ステムに取り付ける角度でハンドルの高さと距離をある程度コントロールできます。さらにハンドルバーを逆さまにするとハンドル位置をもっと低くすることも可能です。しかし、こういった自由度の高さゆえに乗車ポジションの調整に手間取り迷走するおそれもあります。
確実に元のフラットハンドルよりもハンドル位置が近くなるので、多くの場合でステム長の変更は必須になるでしょう。私の場合は元の状態からハンドル位置を近づけたかった(アップライトにしたい)ということがあり、ステムを長いものに交換する必要はありませんでした。あとはシートポストとサドル位置で無理矢理帳尻を合わせています。
自由度の高い調整ができる反面、それゆえに迷走しやすいというのがこのハンドルの一番のデメリットと言えるでしょう。
カスタム早々失敗している
上でも一部触れましたが、すでに「失敗したなぁ……」という箇所がいくつかあります。それはハンドルそのものではなく取り付けたパーツや位置についてのものです。ハンドル自体は導入して良かったと思っています。
まずは「ケーブルのルーティング」。ステム・トップチューブ付近が混線するかと思いハンドルバーに沿わせるようにケーブルを回しましたが意味がなかったです。むしろこれをやったせいで左ブレーキレバーは引きが若干重くなった感じです。
また、ハンドルに沿わせたケーブルの上からバーテープを巻いているので、シフトレバーとブレーキレバーの角度・位置調整ができません。これだと後述するグリップパーツを試しに付けるのも困難……。
「バーテープ」はハンドル径が細いこともありスパカズ(2.5mm厚)ではクッション性不足。素手で握るとすぐ手が痛くなります。パッド付きのサイクルグローブを使えば気になりませんが、それでもクッション性は向上させたいところです。これも現状のバーテープの上からBBBのスポンジグリップを捩じ込もうかとも思いましたが、ケーブルに関係でそれができないというやらかし。
ブレーキレバーも別のものに交換したいところ。所有していた補助ブレーキレバーを流用しましたが横ポジションも使用できるようにするなら「ギドネッドレバー」みたいに横ポジでもレバーが引けるようにした方が良いです。横ポジションは常用しないので特に支障はありませんが、緊急時にすぐブレーキレバーを引けないというのはナンセンスです。(ここを突くとドロップハンドルも同じ問題がありますが)
今後のカスタム予定
前項で触れた失敗箇所をもう少し練ってから改修する予定です。
グリップ部分とバーテープは3mm厚以上のグラベルロード用のバーテープ、ドロップハンドルに貼るゲルクッション材を併用するのが手っ取り早そうです。バーテープだとBBB「グラベルリボン」がゲル内蔵で3.5mm厚なのでクッション性が期待できそうです。
ほかにもメインポジション部分にエルゴングリップを差し込むという手もあります。さらに珍妙な見た目になりますが実用性はあります。実際にやっている方もお見受けしました。具体的にどうするかはまだ検討中。
ブレーキレバーはいずれギドネッドレバータイプに交換するつもりです。このタイプのブレーキレバーはダイアコンペの製品が定番みたいですが、取り付け角度的にはディズナ「ジェイクルーレバー」の方が合う気がします。あと、いくつかの製品を見ましたがハンドル径の関係からポン付けはできないので「調整用シム」の使用が必須となります。
※ダイアコンペはハンドル径23.8mm、ディズナは31.8mmに対応。いずれも「22.2mm」に調整するシムパーツが必要。
以上の追加改修をするにあたりケーブルは無難な配線にするつもりです。と言うよりもそうしないと取り付けができないと思われます。
クセが強いけど実用性のあるハンドル
長々と書きましたが個人的にはマルチポジションハンドルは導入して良かったというのが結論です。色々とクセの強いハンドルですが、「フラットハンドル」という括りの中でツーリング性能をはじめとした乗り心地・快適性の向上、さらに導入理由で述べた「安全性能の向上」などある程度の性能アップは果たせたと言えます。ブルホーンハンドルみたいに前傾で攻め攻めなものを求めていないけど乗り心地を改善したいという需要には導入コスト含めて打って付けだと思います。
余談:カスタム後の車体重量
そこまで重要ではありませんがそれなりのカスタムをしたので車体重量も計測しました。本体(ペダル込み)で「11.1kg」でした。ペダル(ペア366g)を外せば確実に11kgを切ることでしょう。公式サイト確認で吊るしだと11.2kgらしいです。
別記事で扱うつもりですが、本記事カスタム後にリア変速をシマノ「アセラ」というものに交換済みです。シマノ8速でスプロケの軽いギアが40Tもあるという代物。そのほかにも前に投稿済みですがタイヤもシュワルベ「ビリーボンカーズ」に交換しています。
通常ですと今回のマルチポジションハンドルで重量増になるのですが、リアディレイラー・タイヤ・ブレーキレバー・シフトレバーも交換したことでわずかながらトータルで軽量化されたようです。ちなみに今回の計測のために久々にセンタースタンドを外しましたが、あのスタンドは560gもあったことにびっくりしました。もう少し軽くて安定性のあるセンタースタンドが欲しい(矛盾)。