オールラウンダーに使えるグラベル用タイヤ WTB「Byway」レビュー

 今回はかれこれ2年以上使い続けているWTB「Byway」というグラベル用タイヤのレビュー・インプレ的なお話です。WTBは「ロードプラス」というコンセプト・独自規格に基づいたタイヤ製品を出しておりBywayもその一つ。彼らの提唱するロードプラス規格は650bサイズを指しますが、だいたいの製品で700cと650bの両方のサイズが出ています。私はこれまで両方のサイズを使用していますが、数多く出ているグラベルロードタイヤの中ではパナレーサー「グラベルキング」と並びオールラウンダーに使えるタイヤだと思っています。改めて日本の道路環境や他のタイヤのことも踏まえつつ使ってみての感想などを書いていこうと思います。

WTB「BYWAY」について

 「Byway」はWTBが出しているグラベル用タイヤの一つでグラベル だけではなく舗装路の走行性も確保しようというタイヤです。要は良いところ取りを目指したと言うか「器用貧乏」的なコンセプトのタイヤということです。(あれ? 何だかこのコンセプト、謳い文句、フレーズをどこかで聞いたような……)

 WTBは700cより小さいホイールサイズにボリュームのあるタイヤを履かせて快適性を向上させようという「ロードプラス」なるコンセプトを押し出しタイヤを出しています。冒頭で触れた通り、Bywayも例に漏れずロードプラスに基づいたタイヤですが、650bだけではなく700cも出しています。Bywayの主な仕様は以下の通り。

主なBaywayの仕様(公式サイトなど参照・引用)

  • 重量:535g(650b) ・415g(700c)
  • カラー:Tan Wall・ブラック
  • コンパウンド:コンパウンド:Fast Rolling
  • レベル:Road TCS
  • ケーシング:Light
  • 用途:ロード・グラベル
  • コンディション:
  • チューブレス:対応(要シーラント)
  • 定価:9,900円(税込10,890円)

 タイヤのセンターはスリック状となっており、サイドにはブロックが配置されています。これによって舗装路での走りを犠牲にすることなく、グラベル区間にもある程度対応することができます。

 WTBのグラベル用タイヤはほとんどがチューブレス対応です。別途、チューブレス用バルブとシーラントを準備すればチューブレス運用が可能です。

意外と安く調達しやすい

 割と大事なことですがグラベル用タイヤの中では購入しやすい価格帯だと思います。日本の実店舗で置いているところを見たことがないのですが、海外通販を利用する前提なら入手性もわるくありません。wiggleなどでセールを利用すると3,000円台〜4,000円台といった半額に近い価格で購入できます。かく言う私もwiggleのブラックフライデーセールなどの機会で購入しています(そこに自己アフィリエイトも活用)。

 そして、この記事を書いている間に700c×40mm(ブラウン)のBywayの値段が3,900円になっていました。私がポチったタイミングよりも安くなっている……。

 タイヤは前後で購入するケースがほとんどのはずなので価格については性能同様に重要なファクターだと思っています。特にホビーとして乗るのであれば決して無視できないでしょう(所帯持ちの方などは特に切実な問題のはず)。タイヤの仕様・性能は間違いないものでありつつ調達しやすいこともオススメしやすい点です。

 あと、話がそれますがパナレーサーの「グラベルキング」シリーズはAmazonの方が安い傾向です。前から興味があった「グラベルキングSS(セミスリック)」はサイズによりますが約4,000円という価格。

舗装路天国の日本でバランス良く性能を発揮できる

 日本は「林道」と名前の付く道路すらほとんどが舗装されています。砂利道など未舗装路区間までを舗装路中心に走ることになります。そういった日本の道路環境ではどうしても舗装路での走行性に重きを置かざるを得ません。その点、Bywayはタイヤのセンターがスリック状になっているのでグラベルタイヤでありながら「舗装路における走行性」を担保してくれます。ミニベロのグレイシアに履かせているトラッカーのようにギュンギュン音を立てて走るようなこともなく、ロードバイクで舗装路を流すのと大差ない感触を得られています。

 肝心のグラベル、特に砂利道の区間もタイヤのサイドに設けられたノブ。ブロック状のパターンのおかげで特に支障なく走ることができます。このタイヤサイドのノブ・ブロックパターンは効果があるのか問われれば「有る」と答えられます。砂利道走行中に若干タイヤが滑ってもサイドのブロック辺りで引っかかる感触がありました。実際にそこでタイヤの滑りが止まったので機能を発揮していたと言えます。また、サイドのゴツゴツパターンは気休め程度でもサイドカットパンク防止にも一役買ってくれそうです。

 以上のようにBywayは良いところ取り(もしくは中途半端)を目指したタイヤパターンのおかげで割とうまくバランスが取れていると感じました。

*あと、舗装路における走行性に関しては身体能力・体力がヘボい私が「松本市〜白馬村の往復」を問題なく何度もできているあたりで証明になるのではないかと……。

さすがにこういうのは無茶です。走れないわけではないが……。

 一応、欠点と言いますか限界についても触れておきますが、オールマイティーに使えるということはグラベルロード同様に「器用貧乏」ということです。どちらかに特化しているわけではないということでもあります。泥道や雪はさすがに滑ります。

 そういう場所なら「 Venture 」「Raddler」、他にもシュワルベから出ている「Winter Kevlar Guard Rigid Spiked」などノブやブロック、スパイク付きタイヤに換装した方が良いでしょう。もし、行き先の環境に合わせタイヤを換装することも考えるならチューブレス化しない方が交換しやすいですね。

 ちなみにWTBタイヤには650bサイズのみですが「HORIZON」という全面スリック状のタイヤがあります。上の画像はBywayとパナレーサーの「グラベルキング」を並べたものですが、HORIZONは若干グラベルキングに近いタイヤパターンをしています。9:1といった割合でほぼ舗装路を走るならこのタイヤで十分です。

 実際にMARIN「ニカシオSE」やKONA「ROVE NRB DL」など街中や舗装路メインの走行を想定したモデルに採用されているタイヤです。グラベルも十分走れますし9割以上舗装路を走るならHORIZON(もしくはグラベルキング)も選択肢に入るでしょう。私の使い方でもHORIZONで十分ですがセールの割引率、つまり予算の関係でBywayです。

空気圧の管理でどうにでもなる

 グラベル用タイヤ全般に言えることですが空気圧の管理次第で余程のガレ場でない限りほとんどの道に対応可能です。その理由の一つに日本の未舗装路は「砂利道」が多いことが挙げられます。日本の未舗装路は泥でグチャグチャになりにくいように親切に砂利が撒かれていることがほとんどです。

 このような場所に舗装路前提の空気圧で突っ込むとポンポン跳ねたり滑る場面があります。そこで空気を少し抜いてあげると路面への食い付きやクッション性が変わりだいぶマシになります。BywayやHORIZON、グラベルキングのようなスリック状のタイヤでも空気圧次第で十分対応できます。携帯ポンプやサイクルステーションなどで空気を補充すれば元の走行性能に戻せます。グラベルタイヤの運用方法の一つとして認識しておくと良いかもしれません。

「次もこのタイヤにする」と思うくらいにはオススメ

 グラベル用タイヤは続々と新製品が出てきていますが、日本の道路環境で走るならBywayやHORIZON、グラベルキングのようなタイヤで丁度良いと思います。林道と名前がついているところですらほとんどが舗装されている日本ではグラベルロードに最初から付いているゴツゴツブロックパターンのタイヤは走りが重くなるだけです。他の話題になっているタイヤも試してみたいなと思いつつ、これまで色々と走ってきた中でどういうタイヤが扱いやすいかある程度の答えが出てしまっています。さらにセール前提ですが海外通販による価格面・入手性のアドバンテージは無視できないのも事実。次のタイヤもこれで良いかな……となってしまっています。

 Baywayは舗装路での走行性能を犠牲にせず、グラベル区間もしっかりカバーしてくれる日本の道路環境にマッチしたタイヤだと言えます。舗装路と未舗装路の両方をバランス良く対応してくれるその様は「器用貧乏」を体現するグラベルロードにはピッタリなのではないでしょうか。