「INTO THE WILD 版画家 吉田博と吉田遠志」の展示が素晴らし過ぎる!!

 長野県松本市の信毎メディアガーデンで開催中の「INTO THE WILD 版画家 吉田博と吉田遠志」という展示を見てきました。版画家である吉田博氏・吉田遠志氏の親子の作品展示です。お恥ずかしながら両名とも存じ上げなかったのですが作品の素晴らしさに感動しました。(吉田ファミリーとして有名だそうで己の不勉強がお恥ずかしい限り)

 この展示は2022年5月3日(火) – 5月29日(日)の日程で開催されており入場料は無料です。主催は信濃毎日新聞ですが共催としてアウトドアウェアなどを扱っている株式会社ゴールドウィンも加わっています。ゴールドウィンは作品の蒐集にも力を入れているそうです。

 吉田博氏は明治から昭和にかけての版画家で日本の山々や海などのスケッチから版画作品におこしていたという方です。展示作品の写真を載せるわけにはいかないのですがどの作品もよくイメージするような版画とは一線を画するような作品でした。

 作品を見た時にとても版画には見えず絵画だと思いました。また、線や色の置き方など全体的に現代の作品に通ずるものがあります。展示の解説パネルを読むまで現代の存命中のクリエイターの方だと思ったくらいです。ご子息の吉田遠志氏の作品もですが「彫り跡」も作品の描線として表現するなど版画であることの強みを存分に活かしているように見受けられました。吉田遠志氏の作品は動物を題材にしたものが多く、彫り跡で動物の動き、その場の臨場感を伝える部分がありました。その版画表現はマンガでいう「効果線」の役目を果たしているのでしょう。そのあたりの表現手法から先に触れたように現代のクリエイターの方と思った要因なのだと思います。

 今回の展示作品で特に驚いたのは「版画の摺り方」です。最近の絵画作品と思わせるような緻密な色の置き方に加え、山々に朝日が差し込む場面などを「グラデーション」で表現していたので版画には見えませんでした。あまり書くと良くないのですが敢えて色を載せない部分を作ることで表現するなど自分の中での版画のイメージが刷新された感があります。

 4月にリニューアルオープンした松本市美術館では「御大典記念特別展 よみがえる正倉院宝物 」も開催中です。それと併せてでも良いのでぜひ見に行って欲しい展示です。風景写真・動物写真・マンガ的表現が好きな方にはハマる展示だと思います。