360°撮影ができる楽しいカメラ RICOH 「THETA V」レビュー

 流行語にもなった「ソロキャン」という言葉。その火付け役にもなった『ゆるキャン△』の作者あfろ氏の作品に『mono』というものがあります。

 『mono』はシネフォト研究部の活動を描いたお話で『ゆるキャン△』とも世界観がつながっています(各務原家がゲスト出演しています)。お話も好きですがそれとは別に気になっていたのが主人公の雨宮さつきちゃんが使用する360°カメラです。作中では「ヴィータ」という名前ですがRICOH 「THETA」というカメラがモデルです。360°撮影が生み出す変わった画角は『mono』だけではなく『ゆるキャン△』でも随所に見られます。

 長い前振りでしたが興味がありつつも手が出せずにいたRICOH 「THETA V」をこのたび借りて使う機会を得られました。『mono』作中のように

「シータが火を吹くよっ!!」

・・・とやってみたかったのですが、新型コロナによる緊急事態宣言のおかげで山などで撮影ができなかったので可能な範囲で使ってみました・・・。

 実際に使用してみるととても面白く楽しいカメラでしたので使用感などについて触れたいと思います。

RICOH 「THETA」とは?

 リコーの「 THETA(シータ)」は「360°の全天球イメージ」を撮影可能」という魚眼レンズ2枚を組み合わせたカメラです。公式サイトにもありますが360°の空間をそのまま切り取ったような画像や映像が残せます。

写真の撮影

 

 使い方はとても簡単で写真のように構えてボタンを押せば撮影できます。本体サイドボタンで写真とビデオのモード切り替えが可能です。

 ちなみにこの持ち方だと写真下部に指が映ってしまうので手持ちグリップや自撮り棒を利用した方が良いです。また、カメラ本体下部は死角になるので頭上にカメラを持ってくれば自分が写りません。

 撮影した写真はこういう形で保存されます。画像の真ん中が前面レンズ、両端は後面レンズ。この写真を専用アプリの「RICOH THETA」に読み込むと下のような360°の画像が楽しめます。

 「THETAシリーズ公式サイト」ではSNSアカウントでログインすることでSNSと連携して作品をアップすることが可能です。また、アップした作品のHTMLコードを取得し貼ることで下のように掲載することが可能です。

テスト投稿 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
夜のバスタ新宿からの景色 – Spherical Image – RICOH THETA
テスト投稿。 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

 映り込んでいる人物などの関係で本記事にはアップしていませんが、開けた平地よりも「ある程度高さのある建築物などがひしめく場面」の方が360°・魚眼レンズを活かした臨場感のある写真が撮れるように感じました。

ビデオ撮影

 動画撮影も基本的な操作方法や流れは写真と同じです。専用アプリの「RICOH THETA」でスマホとWi-Fi接続すると画角や細かい設定などを確認しやすいです。

画質は4KとフルHDが選択可能です。フルHDにすれば撮影可能時間は延びますがお世辞にも画質はよくありません。360°で記録することもあり4Kが前提だと感じました。

 専用アプリで読み込んだものがこちらの動画です。こちらも写真同様に映像内をドラッグすると視点をグリグリと変更することができます。

 YouTubeに投稿する場合は「RICOH THETA file Transfer」という専用アプリでYouTube投稿用に書き出して投稿します。

サイクリングでの使用

 自転車でも使用してみました。手持ちのアクションカムのアダプターを流用。GoProのようにはいきませんが、アダプター次第では取付位置やアングルの調整が可能です。ただ、球面レンズが剥き出しなのでぶつけて破損しないように設置箇所を選ぶ必要があります。

 実際にサイクリングで撮影した動画です。360°で撮影していますが私が写ってしまっているので問題ない画角で切り貼りした動画を貼らせていただきます。編集方法としては欲しい画角で再生し、Macのスクリーンショット機能(選択部分を収録)でキャプチャしています。

気になった点

レンズの破損リスク

 本体については「レンズの破損・キズのリスク」が気になります。本体デザイン・仕様からやむを得ないのですが、レンズ剥き出しなので小まめに本体ケースに収納した方が良いでしょう。もし、レンズに擦り傷でも付こうものなら精神的ダメージは計り知れません。形状からアクションカムのようにレンズカバーを付けることもできないので取り回しには神経質になります。

 残念ながら本体にストラップを付けられるところがありません。オプションで手持ちグリップや三脚を付けるなどポロッと落とすリスクを無くす工夫が必要だと思います。

作品公開とプライバシー

 気になるところというよりも注意点と言えますが「作品公開についていつも以上に気を使う」ところも挙げられます。

 個人や仲間内で楽しむ分には問題ありませんが、ブログやYouTubeでの公開時に無関係な人の顔が「判別可能なレベル」で映っていないかなど気をつける必要があります。360°画角なのでこの辺りのチェックを通常の写真・動画より入念に行わないと思わぬところに映っているということもあり得ます。今回アップした写真や動画も「個人用」と「公開用」を分けて編集しています。

 同じく作品公開について先に挙げた「THETAシリーズ公式サイト」での公開です。SNSアカウントと連携して使用しますが「SNSをやっていない方」、「SNSと連係したくない」もいると思うので独自アカウントを作成するなどすると公開までのハードルが下がるのではないかと思います。

「THETA SC2」との違い

今回使用したV以外にも「THETA SC2」という廉価版のような位置付けのモデルがあります。こちらも4Kでの記録が可能でどちらを選ぶか迷うところですが、下記の違いがそのまま購入する際の選択基準になると思います。

*最上位機種に「THETA Z1」というモデルもありますが値段が高すぎるのでここでの比較では割愛します。

 先にも触れましたがSC2との大きな違いは「最大連続録画時間」です。SC2は連続録画時間が3分間です。つまり1本の動画を「最長3分間」しか録画できないということです。「3分間のショートムービー」としてまとまりを持って撮影できる利点がありますが個人的には心許ない時間です。特にアクションカム同様に撮りっぱなしにしたいときには不便です。対するVは「5分間or25分間」です。欲を言えば「時間設定のオンオフ」機能が欲しいところですが、この撮影時間の点でVの方が使いやすいように思います。

 最長録画時間に難がありますが値段とカラーリング、写真撮影メインでカジュアルに360°カメラを体験したい方には「THETA SC2」は手が出しやすいモデルと言えます。カラーに関してはピンクとブルーが可愛いくて好きです。

使っていてとても楽しいカメラ

 今回、「THETA V」を使用できる機会を得られたわけですが、予想以上に「360°の映像が楽しいもの」だと体験することができました。既に持っているカメラやアクションカムに置き換わる物ではありませんが、残せる画像・映像や表現の幅が広がる面白いカメラだと感じます。高層ビル群など人工物がひしめく街中での撮影で強みを発揮しそうなカメラですが、個人的には登山など「高地で見晴らしの良い場面」での撮影にもぜひ使用したいと思いました。