ダホンの折りたたみ自転車「K9X(ケーナインクロス)」を導入しました。昔、ダホンの折りたたみ自転車を購入したのがきっかけでいわゆる「スポーツ自転車」にハマり出したので、揺り戻しと言いますか原点に立ち返ったような気分です。なぜ、再び折りたたみ自転車を導入したのかは別記事で後日投稿する予定です。本記事では実際に使ってみての感想など書いていきたいと思います。
結論:全体的に高品質にまとまっている折り畳み自転車
K9Xの折り畳み機能による携帯性と走行性能をうまくまとまっているミニベロだと思います。あくまで「折りたたみ自転車」というカテゴリ内での話ですが、公式サイト記載重量9.5kgという軽量性を確保しつつ、16インチのホイールサイズ、長めのホイールサイズ、9段変速、ディスクブレーキによって走行性能と走行安定性を併せ持っています。
16インチの小径車なので20インチミニベロやその他クロスバイク・ロードバイクと比べれば走行性能は劣りますが、上記仕様によりだいたいのエリアを安定して走ることができるでしょう。また、自転車を押して行ったり、担いで行く必要が出てきてもその車体重量からそこまで苦にならないと思います。サイクリングのみならず、それ以外の旅のお供として使っていける一台です。輪行での負荷を減らしつつ、それなりの走行性能を確保したいという人にはピッタリな自転車だと思います。
K9X各部について
K9Xは一般的なミニベロ(20インチ)よりも一回り小さい16インチサイズのホイールを採用しています。ちなみに16インチサイズのミニベロといえば「ブロンプトン」が有名ですが、同じ16インチでもサイズが微妙に違います。ブロンプトンはエトルト規格で349ですが、K9Xは305なのでわずかに小さいのです。20インチミニベロで言うところの406と451に関係に近いものがあります。
また、同じダホンのKシリーズに「K3」がありますが、比較するとフレームのホイールベースが長めに取られているので走行時の安定感で差があります。試乗で乗り比べると体感ではっきりとその差を感じる程度には違いがあります。このホイールベースの長さは一般的な20インチモデルと変わらない寸法でしたので、20インチか16インチかの違いだけと言ったところ。
フレームに絡んでもう一つ触れておきたいのが「デルテック」というワイヤーパーツ。K3やスピードファルコなど一部モデルで採用されている部品で、折り畳みヒンジ部分の強度と耐久性を高める効果があるのだとか。実際に効果があるのか眉唾物ですが、実際に乗った感触としては「一定の効果はある」と思いました。昔乗っていたものだとヒンジ部分で「ガタ」と言いますか、漕いだ力が抜けている感覚がありましたが、今回はそういうものがありません。気休め程度でしょうが効果はあるということなのでしょう。
タイヤはケンダ「CST C1653 16×1.5」という可もなく不可もないスリックタイヤです。このサイズのミニベロだと走行安定性の面で若干心許ない気がします。輪行前提の短距離なら問題になりませんが、気になるなら太いタイヤに履き替えても良いと思います。
おそらくK9Xの目玉の一つであるディスクブレーキ。テクトロ「MD-M30」という機械式(ワイヤー引き)のブレーキです。ホイール径が小さくなるとストッピングパワーがさらに強くかかるのでこのままでも十分な制動力があります。
また、ディスクブレーキ採用のメリットは制動力以外にもあります。リムブレーキの場合、16インチくらいの小径車だと車輪の回転数が必然的に多くなり、ホイールリムとブレーキシューの摩耗速度が早まります。ダホンのKシリーズにはさらにホイールサイズが小さいK3(14インチ)がありますが、ホイール周りの消耗・故障の頻度は多いようです。こういったことからも重量増になりますがディスクブレーキ採用は最適解だったと思います。また、タイヤ幅の制約が緩くなるので太いタイヤを装着可能です。私がK9Xを選んだのはこういうことも理由にあります。
ちなみにフロントのディスクブレーキは変わった位置に付いていますが施行ミスではありません。畳んだ時にマグネットに干渉するのでこの位置に着いています。
変速は9段変速でこの手のモデルにしては多段ギアを採用しています。リアディレイラーとシフトレバーはダホンオリジナル、スプロケはシマノ「CS-HG400-9」を採用。リアディレイラーに関してはおそらくコストカットが主目的と思われます。あと、プーリーが地面に擦らないようにするためというのあると思います。
フロント55Tとリア11-28Tなのでギア比は高めですが、16インチホイールなのでトップでも割と苦もなく踏めてしまいます。これだけのギアを備えているので街中でも出くわすであろう急な坂道を含めほとんどの場所を走れます。ギア比をさらに軽くしたい場合はリアディレイラーの都合からフロントのチェーンリング交換で対応した方が良さそうです。
上記以外の部分も割と質感の高いパーツが使われており、サドルとシートポストもそのままで不足なく使っていけます。サドルは座面の質感が良いので極端に合わないということがなければ無理に変える必要はないでしょう。シートポストも軽いと言えないまでもメモリ付きで耐久性もありそうなものが採用されています。サドルとシートポストを合わせて830g程度でした。どうしても軽量化したいとなれば、値は張りますがKCNC「ライトウイング」に交換するのも手だと思います。3万円ほどしますが……。
ハンドルグリップは軽量化のためかスポンジグリップです。このタイプのグリップは長い時間乗っていると手が痛くなるのでエルゴ形状グリップに交換することをオススメします。私のように輪行前提で使うにしても加水分解などで遠からずボロボロになることでしょう。過度な軽量化は何かしら犠牲にしているということの一例です。そんなわけで私はエルゴンの「GA3」に交換しました。
ペダルは三ヶ島「UX-D OneSide Ezy」が最初から付いています。名前の通り、右側だけ輪行を意識してなのか着脱式となっています。ダホンのペダルといえば500g越えの畳んでも小さくならない上に滑りやすく危ないペダルが付いてきたものですが、順当にアップデートされているのでしょう(しみじみ)。
安定感のある走行感
あくまでも14インチのK3や他ミニベロと比較しての話ですが、16インチ小径車の割に非常に安定感があります。フレームの部分で触れたホイールベースが長めに取られていることも関係しているのでしょう。ハンドリングがクイックな操作感ではあるのですが、身体能力が低い私でも「なんとか乗れるかな」と思わせるくらいには安定感があります。また、高めのギア比設定もありスピードはそこそこ出ます。そこら辺の20インチミニベロと変わらない速度域で走れます。安定性の兼ね合いからスピードの出し過ぎは厳禁ですし、積極的にグラベルなど未舗装区間に突っ込む自転車ではありませんが手を加えればメインでも使っていけるポテンシャルがあると思います。(走行時の速度感は冒頭に貼った動画である程度わかるかと。)
ディスクブレーキはそのままでも制動力抜群!!
先に触れた通り、ブレーキはテクトロ「MD-M30」という機械式ディスクブレーキを採用しています。ワイヤー引きの機械式ディスクブレーキですが、小径ホイールサイズなので制動力は抜群です。フェザータッチを意識してレバーを引かないと効きすぎて怖いです。特に下り坂は気を付けないと前転する恐れもあります。ここまで制動力があると油圧式ブレーキに交換する必要性は無いと思います。費用対効果は微妙です。
また、K9Xはケーブルが内装式です。折り畳んだ時にフレームのヒンジ部分では画像のように曲がるので液漏れなど故障リスクが懸念されます。そのお金があるならタイヤ・ホイール・アクセサリなどに回した方が良さそうです。
重量感はある……がそれ以上に畳めるメリットが大きい
K9Xの車体重量は公式サイトでは9.5kgと記載されています。実測ではペダル・ベル付きで10.28kgでした。某サイクルショップのYouTube動画でも同じ数字だったので間違いはないかと思います。ペダルとベルを外せば公式の重量にはなりそうです。ただ、K9Xは持ち上げてみると見た目とスペックシートの重量の割には重く感じます。小さいボディにギュ~~~~ッと詰まったような重量感です。さらにディスクブレーキと9段変速が原因なのか本体の後方に荷重が偏っています。
折り畳むと前後のディスクブレーキが後方に行くので余計に荷重が偏ります。畳んだ状態で持ち上げた時の重量感はK3と比べると雲泥の差。スペック数値から想起されるであろうものよりもズッシリとした重量感があります。
しかしながら、折り畳み機能は非常に便利です。フルサイズの自転車と異なり前後のホイールを外す手間を要せず輪行袋へ収納できる点は大きなアドバンテージです。
ロードバイクなどの輪行では袋にパッキングする時間(15分〜20分程度)も考慮する必要がありますが、折り畳み自転車では慣れれば5分程度で全行程が完了します。実際に輪行をした方ならこの時間差がどれほどのものかお分かりいただけるかと思います。
輪行袋に収めたサイズも大型の旅行用カートくらいのボリューム感なので、鉄道車両内でもそこまでの占有感はありません。このくらいなら新幹線の後部座席裏の荷物置きスペースにも問題無く収まるでしょう。重量も大事ですが嵩張るかどうかも輪行・トランポにおいて重要なファクターだと改めて実感しました。 ※画像だと20インチも入る袋なのでダボつき感があります。
ついでに輪行袋の話ですが、K9X購入時に販売店がおまけで付けてくれた「Kronos( クロノス)輪行バッグ 16インチ〜 20インチ用」が地味に使いやすく便利でした。
ダホン純正と異なり肩紐を自転車本体に括り付けるのではなく、自転車本体をただ袋に入れるという単純構造。そのシンプルさ故に収納しやすかったです。畳むとそこそこの大きさですがシートポストにそのまま括り付けられます。いかにも「折り畳み自転車向け輪行袋」といった製品です。当初はモンベルの輪行バッグでも買おうかと思ったのですが当面はこの製品を使い続ける予定です。お値段も調べたら定価4,400円なので手が出しやすいのも良いです。(セールで値引きされていることがあるようです)
スタンドは付けて欲しかった……
大きな不満点が無いK9Xですがキックスタンドは標準で装備しておいて欲しかったと思いました。16インチホイールサイズでディスクブレーキを採用しているので下手なキックスタンド、センタースタンドだとディスクブレーキのローターに当たります。
とりあえずギザプロダクツのセンタースタンドは大丈夫でした。別にギザではなく他の会社でもスタンド本体が「マスロード製」なら問題ないはずです。他の手持ちの片足キックスタンドも試しましたが、ホイールサイズ、地面との距離から畳んでも接触しそうなものもありました。これなら最初から大丈夫なのを付けておいてほしいです。
ライバルはK3ではなくDEFTAR(デフター)です
ダホンのラインナップ上でのK9Xの比較検討対象は「DEFTAR(デフター)」だと思います。実際に試乗すると分かりますがK3よりも走行感が近く、モデルの性格が似通っていることがその理由です。
デフターは20インチホイールサイズで10kg前後の軽量モデルの位置付けです。K9Xと値段も約3万円差です。あとは本体サイズ、ブレーキの違い、求める走行性能で変わってくるのかなというのが試乗した時の感想。
対するK3は見た目こそK9Xと似ていますが実際の走行安定性と全体的な乗り心地は全くの別物です。ついでに言えばギアの変速段数も3段と9段と大きく差があるのでそこでも別物感が出てきます。K3から20インチの折りたたみミニベロまでを一通り試乗したら「K3とK9Xのどちらにしようかな?」とはならないと思います。
手を加えれば中・長距離もいけると思う(蛇足)
ここからは余談と言いますか蛇足のような話。K9Xは16インチサイズのホイールサイズながら20インチのミニベロに迫る走行性能を持っています。ミニベロロードのような高速域を求めたり、積極的に未舗装路に突っ込むモデルではありませんが、荒川河川敷など「平坦ベースの舗装路」を中心に走るならメインバイクとして不足なく使っていける自転車です。
ただし、吊るしのままだと快適とは言えないので中・長距離も走るのであれば少し手を加えた方が良いです。特に先に触れた「ハンドルグリップ」はエルゴングリップなどに交換するのがオススメです。中距離でおそらく手が痛くなってきますし、スポンジなので遠からずボロボロになるはず。
併せて交換を検討したいのが「タイヤ」です。標準タイヤは太さ16×1.5のスリックタイヤを履いていますが、ホイールサイズのこともあり心許ないです。舗装路なら問題を感じないと言いつつも路面の荒れや割れ目、段差で気を遣う場面はあります。乗り心地の改善のみならず「安全性」も求めるという意味ではシュワルベの「ビッグアップル」、「ビリーボンカーズ」に交換したいところ。どちらもタイヤサイズが16×2.0なので見た目も乗り味もガラリと変わるでしょう。タイヤのサイズの関係から選択肢はこの2つくらいしかないので迷う必要もないでしょう。それが原因なのか入手が難しい状況ですが……。
他にも蛇足でホイールのインチアップだとかコンポ変更、ハンドルバーを替えるなどありますが、そういうことをやっていくと他の走行性能高い自転車が買えてしまう金額になるので他人様にお勧めするものでもないと思います。昔、そういったことをやりましたがコンポ周りいじると費用が一気に高騰しますし個人的にはもういいかなと……。あと、ハンドルバーに関してはハンドルポストが内折れタイプなので使えるものが限られそうです。
少なくともハンドルグリップとタイヤを交換するだけでもガラリと快適性が増すのではないでしょうか。