「大糸線サイクルトレイン」を利用して思ったことなど

 先日、「大糸線サイクルトレイン」を利用して糸魚川まで行ってきた話を書きました。さらにその前は大糸線ファンミーティングに参加するなど、廃線の是非が検討されているJR西管轄の大糸線(大糸北線)を利用する機会が立て続けにありました。数年前から利用する機会はありましたが、サイクルトレインも使ってみて色々思うところもあったのでまとめてみようと思います。

観光列車の路線が現実的かも

 まずは大きな主語で大糸線、特にJR西日本が管轄する「大糸北線(南小谷駅〜糸魚川駅)」についてですが、「観光列車」という路線で押し出していく他ないと思います。これは自分が実際に乗った際の利用者層を見てもそう思いました。

 ファンミーティング参加時の記事でも触れましたが、そもそもの沿線人口が少なさと車の普及率から「生活の足」として需要でなんとかするのは無理があります。そうなるとあとは観光に振っていく選択肢しか無いように思います。次項で触れますが、実際に乗車している人を見ると明らかに観光客がほとんどでした。ただ、民営化前から赤字を抱えている路線なので赤字解消は厳しそうです。

乗客がいないわけではない

 「廃線の是非が議論されているローカル路線」の割には乗客が多く乗っています。もちろん、曜日や時間帯によっては数人ということもあります。ただ、自分がこれまで見てきた限りでは、平日含めて0人とか空気輸送のようなことは無いように見受けられました。少なくとも土日は観光客の利用もあって車両に対して席がそこそこ埋まっていました。まぁ、昨今のニュースで話題性が高まったことが作用している部分もあるのかもしれません。いずれにしても言うほど乗客数が少ないわけではないということです。

 乗客数より気になったのは途中下車の人がほとんどいないこと。大糸北線の収支には直接関係しませんが、鉄道路線と地域経済は共依存の関係のはずなので、途中下車してお金を落としてもらう仕組み(観光地やら見どころなど)を構築していかないと共倒れになると思います。

使いづらさが気になるサイクルトレイン

「南小谷駅までどうやって行くか」というアクセス面がまず障壁になる……。

 やっと本題というところですが「大糸線サイクルトレイン」の話です。自転車をそのまま電車に乗せられるのは快適ですし、セットで電車旅も楽しめると思えば良いものだと言えます。ただ、それ以上に使いづらさが気になったのは事実。予約して利用するまで、実際の利用にあたってなど利用してみて感じた制約は多いとと感じました。

実施日が少ない

 サイクルトレイン実施日が少ないのが真っ先にハードルの高さを感じさせます。私の利用した秋シーズンは9月に2日、10月に1日という少なさ。後述するえちごトキめき鉄道のサイクルトレインや他地域のようにほぼ毎日の運行でも良さそうなものです。とは言え、これは他の乗客がそこそこ乗っている現状では難しいとも思います。自転車の固定方法など細かい実施形態の変更をセットで進める必要はあるでしょう。

接続性の悪い運行ダイヤ

 さらに踏み込むと「運行ダイヤ(時刻表)」も使いづらさを押し上げている要因だと思っています。以前にも別記事で乗り換えにおける南小谷駅(および糸魚川駅)の接続の悪さについて触れましたが、通常ダイヤの車両をそのまま使用するサイクルトレインでもこの問題が付きまといます。今回のサイクルトレインは全て輪行で済ませたかったのですが、それをやると行き帰りそれぞれ2時間近くのロスが発生します。「せっかくだから電車で移動したいところだけどそれをやると支障が出る」というレベル。

 前の記事で「現地滞在時間が糸魚川駅発着組と比較して短い」ことを挙げましたが、その原因も接続の悪い運行ダイヤにあります。サイクルトレインに関係なく真っ先に改善すべきものと言って良いでしょう。

自転車の乗せ方・固定方法

 「自転車の固定方法」も再考の余地があると思います。吊り下げるにしろ、ラックに固定するにしろ、手間がかかり過ぎているように見受けられました。丁寧な固定で自転車と車両保護をしっかり保護できるメリットはありますが、係員が付きっきりになっていたので人手を割く必要もあり、スムーズな運用を妨げている要因にもなっています。キハ120という車両を使用している都合上、やむを得ない部分がありますが、ロングシート車両であれば各自で自転車を支えて座ってもらうという方式でも良いのではと思いました。

途中下車ができない

 途中下車ができない点も残念だと思いました。通常の運行ダイヤにおける車両をそのまま使用しているので終点(南小谷駅or糸魚川駅)までの各駅で停車します。ところがサイクルトレインにおいては途中下車ができない仕様。途中下車してまで見るものがあるかどうかの話は置いておくとして、サイクルトレイン専用の運行車両でもないのに途中下車できないのは勿体無いと感じました。

 私がまさにそれですが、平岩駅や根知駅あたりで途中下車して周辺を散策したいとも思うので、わざわざ途中下車不可にしなくても良かったように思います。おそらく前述の車両の固定や帰りの点呼などの「参加者の管理」の部分でカバーしきれないという事情があるのかもしれません。ただ、糸魚川駅周辺以外の沿線地域にも立ち寄ってもらうということができた方がお互いwin-winな気もするのです。

えちごトキめき鉄道のサイクルトレイン形式も試して欲しい

 以上に挙げてきたことは総じて「そこまで大仰にやらなくても良いのではないか」という想いから来ています。これはサイクルトレイン当日の進行や自転車の固定など諸々についてです。例えば「サイクルトレインツアー」みたいな旅行企画の一つとして今回のような形式でやるは有りとだと考えます。それとは別にただ単純に自転車をそのまま乗せられる運行形態があっても良いと思うのです。例えば、隣接路線のえちごトキめき鉄道で行われているようなサイクルトレインです。ほかにも挙げるとすればアルピコ交通「上高地線」におけるサイクルトレインも似たようなものでしょうか。これらも多少の制約はあるものの大糸線サイクルトレインと比較すればだいぶ融通が効きます。運用車両の都合もあるでしょうから実行するのは大変かもしれません。ただ、実証実験でも良いので一度はお試しで実施してみてほしいところ。やってくれたら真っ先に使いに行きます。