tern 「Verge P10」レビュー 全部載せのような折り畳み自転車

 メインミニベロの買い替えとしてternの「Verge P10」を購入してから1年が経とうとしています。購入時および購入後も仕様変更しつつもメインミニベロとして使用しています。納車から乗り続けて特徴やクセも掴めてきたので振り返る意味でもレビューとして本記事を上げます。色々挙げていくとキリがないので大きな特徴や自分が使っていて気になった点を列記していく形で以下に書いていきます。なお、私が今回納車したVerge P10は購入元の関係から本来の仕様と変わっているので予めご承知おきください。

Verge P10の主な仕様・特徴

 tern (ターン) の Verge P10は、高い走行性能と利便性を兼ね備えたternブランドを代表する油圧式ディスクブレーキ採用の20インチ(451ホイール)モデルです。 主な特徴を挙げていくと以下の通り。

・軽量かつ回転性能の高い「Kinetix Pro Wheel(20インチ451規格)」と「シュワルベワンタイヤ」による高い走行性能

・高剛性で滑らかなヒンジ機構を備えたアルミ製ハイドロフォーミングフレーム

・VROステムによる自由度の高い乗車ポジション調整

・シマノの油圧式ディスクブレーキ採用

・シマノ Deore10速のワイドレシオなギア構成

・重量11.7kg

・価格204,600万円(税込)※2025年に値上げになりました

 公式サイトでも「Vergeシリーズの最高傑作。~多くを求めずバランスが取れたベストフォールディングバイク~」と自ら「最高傑作」と言うくらいに折り畳み自転車としての機能性と走行性能を高水準で両立したモデルです。Vergeシリーズは最高位モデルとして「VergeX11」というモデルがありますが価格が約40万円します。本体の仕様を鑑みてもVerge P10は高い水準でバランスが取れていると思います。

  あと、私が購入したのは2025年モデルの「ダークシルバー」というカラーです。他に「ガンメタル」と「サテンブラック」があります。なお、2026年モデルではダークシルバーがなくなってしまったようです。

 「ダークシルバー」という名前ですがダーク要素は皆無でギンギラギンなシルバーです。Verge P10は前から目をつけていたモデルでしたが今回のシルバーカラーが出たことも購入の決め手です。P10は従来ブラックやガンメタル系統が多いのでシルバーカラーは貴重です。

 あと、デカールの「差し色」が従来カラーと比べるとメインカラーの同系色でまとめられています。他のサテンブラック、ガンメタも同じようなペイント構成。近年のVergeシリーズは全体的に落ち着いたペイントデザインなので人を選ばないと思います。また、こういうシンプルな車体カラーだとサドルバッグなど各種オプションの色も合わせやすいです。

 おまけで触れておくと右側脱着式ペダル、リアライト、ポーターサドルといったオプション類も充実しています。リアライトは公道を走る際に必要ですし、右側脱着式ペダルは折り畳みで重宝します。

 ポーターサドルはサドル下にパッドが付いているので肩にかけて担いでいく時に便利です。(単体で8千円するお高いサドル)

美しい曲線と剛性感のあるハイドロフォーミングフレーム

TernのVergeシリーズは美しい弓形の曲線を描いたフレーム形状が特徴です。先述のカラーと合わせて一目惚れ的に選んだところがあります。前に乗っていたMuSP9もですが、個人的にはこの曲線形状のフレームは好きです。

 また、なだらかで綺麗な曲線形状の見た目に反して各フレームパイプは太めでガッシリした造形です。ダホンだと同じくアルミのハイドロフォーミングフレームのヴィガー系が似ているでしょうか。さらに折り畳みヒンジ後部からシートポストを挟むようにフレームチューブが二股に分かれる形状も特徴だと思います。ダホンなどの他の折り畳み自転車と比べるとガッシリ骨太な印象を受けるのはこれのためだと思います。おそらくこの形状で剛性を持たせているのでしょう。

 ついでに剛性に関する話として、最近のダホンのモデルで採用されている「デルテックワイヤー」にあたるものをTernは採用していません。あれはダホンの特許技術なので採用していないのは当然ですが、それの有無による剛性・耐久性の違いは個人的に興味があるところです。

滑らかな折り畳みヒンジ機構

Vergeシリーズで実際に折りたたんで驚くのが折り畳みヒンジの滑らかな可動です。これはダホンと比較しても動きの滑らかさに差を感じます。IGUSベアリング採用の特許技術だそうですがフレームとハンドルポストのヒンジがカクつきを感じさせない滑らかな動き。レバーのカッチリ感とロック機構も相まって折り畳み機構は非常に高品質です。

 折り畳み自転車にとって「畳みやすさ」は非常に重要なので、そこを犠牲にせずにうまくまとまっているのはさすがというところです。また、付属のペダルが右側脱着式でサドル後部にマウントできるのも便利です。お世辞にもペダルの回転は良くありませんが最初からこれが付いているのはありがたいところ。なお、重量は後述しますがラック類などが付いた上画像の時点で13kgはあった記憶。今の状態だともっと重いはず……。

T-BarハンドルポストとVROステム

 Verge P10には最初からT-BarハンドルポストとVROステムが採用されています。一般的な自転車やロードバイクで言うところの「ステム」にあたる突き出し部分があります。これのおかげで六角レンチでハンドルバーの高さ・角度をある程度調整することができます。シートポストの高さとサドル位置を合わせて調整することで、ロードバイクのようにある程度のポジション調整ができるのは大きなアドバンテージです。

 また、このT-Barハンドルポストを最初から採用していることでドロップハンドルやブルホーンハンドルなど前方荷重が強いハンドルシステムも使うこともできます。さらにVROステムをリデアのステムパーツなどに変えることでロードバイクの31.8mm径規格のハンドルバーも取り付けられます。そういう意味での拡張性の高さも特徴であり強みと言って良いでしょ。

 ちなみにこのハンドルポストとステムパーツはバラだと合わせて3万円くらいします。ダホンもですが10万円~15万円のモデルも後からこれらのパーツに交換するとVerge P10の価格に追いつくというのがわかるかと思います。

※一般的なハンドルポストだと前方荷重が強いハンドルを支えるには心許無く、トルクによっては大変危険なので非推奨です。

油圧式ディスクブレーキで制動力抜群

 シマノ「BR-M315」という油圧式ディスクブレーキが採用されており制動力は抜群です。ワイヤー引きに比べて軽くブレーキレバーを引いただけでしっかりとブレーキが効きます。

 特に下りの場面ではワイヤー引きよりも握力を消耗せずブレーキが引けるので安全性に大きく寄与します。握力の弱い方には安心材料と言えます。また、「折り畳み自転車」としては油圧式ディスクブレーキ採用車自体が少ないので選択肢としても貴重な存在です。他メーカーのモデルについては少なくとも20万するモデルならディスクブレーキでも「油圧式」を採用しておいてくれと思う次第。

オールラウンドに走れるギア比構成

 変速関係はシマノのマウンテンバイクコンポ「DEORE(デオーレ)」を採用しています。通常だと10段変速ですが、今回は購入元(ベロキッチンさん)の無償アップデートで11速になっています。ついでに触れておくとP10純正ホイールのフリーボディがシマノ11速に対応しているので、MTB系に限らずシマノの他コンポ11速化も可能です。

 フロントチェーンリングは53Tとスポーツ系ミニベロに多い数字ですが、リアが11-40Tとワイドレンジかつ軽いギア比構成です。フロントシングルですがワイドなギア比なので平坦路からキツめの坂道までオールラウンドに走れます。きつい坂道を何度か走っていますが私でもなんとか登れました。

 強いて言えば平坦な舗装路しか走らない人には重いギアが物足りないかもしれません。チェーンリンングを大きい物に交換するか、スプロケットを小さいものに交換しても良さそうです。逆に私のように坂道もそこそこ走ることが想定されるならチェーンリングを50Tや40T台にしてしまうのも手と言えます。

 あと、完全に余談ですがVergeP10の購入を通じて、シマノMTB11速とシマノ8〜10速がフリーハブ規格が同じだと知りました。「HGスプライン(HG Spline M)」 という規格だそうです。それで前ミニベロのグレイシアのホイールにDEORE11速スプロケを装着すれば使い回せるという気付きを得た次第。シマノ8速を採用したモデル(Verge N8、Defter系、Speed Falcoなど)も同規格のホイール対応なのでシマノMTB11速ならホイール交換なしで11速化できるわけですね。他はシフター、リアディレイラー、チェーンの交換が必須ですが、ロード系11速を導入するよりは安く済みます。

速くは無いけど走行性能は高い

 先述の通り、ワイドギア比構成なのでミニベロロードのような高速走行はあまり期待できません。ただ、自社製軽量ホイール「Kinetix Pro Wheel(20インチ451規格)」「シュワルベ ワン」という高品質パーツを最初から採用しているため、転がりの良さと巡行性能の高さは実感できます。また、フレーム剛性の高さゆえにペダリングのパワーが抜けていく感じもなくグイグイ伝わります。

 ミニベロロードとまではいかないまでも、スポーティーな走行性能を求める人には刺さる走行性能だと思います。

※上の画像のように納車すぐにIRC「SIREN COMP(20×1-3/8)」に交換していたのでシュワルベワンでは未実走。

タイヤとコンポがどっち付かずな構成

 上記を読んでお気づきの方もいそうですが、「ホイール・タイヤ」と「コンポ」がチグハグと言いますかどっち付かずな構成になっています。ミニベロロードなど走りに振ったモデルに多い「20インチ451規格を採用しながら、変速関係は「MTB系コンポ」の軽いギア比という構成です。ワイドで軽いギア比をホイールサイズで補っているとも取れますが、451規格のポテンシャルを引き出すには軽すぎるギア比……という具合に中途半端な印象です。先述の通り走行性能は高いのですが、このチグハグ構成が気になる人は気になるかもしれません。

 ネットで「ドロップハンドルカスタム+ロード系コンポに換装」というカスタムを見かけるので一定数そういう方がいるのは確かと言えます。かく言う私自身も、406規格ホイールで太いタイヤ履かせてMTBのような構成に振っています。悪く言えば「どっち付かずの器用貧乏」ですが、よく言えば「拡張性・汎用性が高い」、「自由度が高い」と評価できます。

乗り味は硬い

 走行性能が高いと書きましたがそれゆえに乗り味は硬めです。小径車という性質上、どうしても路面からの振動を拾いやすいです。それに加えて高剛性のアルミフレームとフロントフォーク、20インチ(451)ホイールと細いタイヤ構成により、さらに路面からの振動を拾って乗り手にダイレクトに伝わる感じです。一昔前のカチカチのアルミフレームのロードバイクに近い乗り味と言うと言い過ぎでしょうか。私の経験範囲だとダホンのMuシリーズを思い出す乗り味。剛性とパワー伝達とのトレードオフになっている印象。

 どうしても路面からの振動・衝撃が気になる場合は、タイヤを標準の「20×1-1/8」から「20×1-3/8」の太いものに変えると多少マシになります。本当に気休め程度ですが。ただ、451規格はタイヤの太さがその2種類しか選択肢がなく、大きく変わるわけでもないのが悩ましいところです。

 後はお金がかかりますがディスクブレーキモデルという強みを活かして、406ホイール交換して太いタイヤを履かせる手もあります。私もしばらくしてから前ミニベロの406ホイールを流用して乗っています。タイヤもシュワルベの「スマートサム(20×2.35)」というMTB用の太いタイヤを使用しています。 

 Vergeフレームはクリアランスがだいぶ余裕を持って造られているので2.35の太さでまだ余裕があります。しっかり整備された舗装路オンリーの使用環境なら純正のままで良いですが、多少の未舗装路も走るなら検討する価値はあります。

しっかり自立できるスタンドを装備

 Verge P10は最初から片足キックスタンドを装備しています。個人的にはVerge N8などのようにBB付近でダブルレッグセンタースタンドが使いたかったので、この点だけは残念に思った部分です。

 ところが実際に使ってみるとスタンドの脚自体も気持ち太めでガッシリした剛性感があり、しっかりと車体を支えてくれます。強風時や接地場所は気をつけた方が良いですがこれまでのところ支障はありません。ほとんど期待していなかった点だけにしっかり自立してくれたので良い意味で予想を裏切る結果となりました。

ハンドルバーはカットするのがオススメ

購入時に56cmにカットしてもらいました

 この記事を書くまで忘れていましたが、吊るしの状態だとハンドルバーが60cmと非常に長いものが採用されています。マウンテンバイク並みの長さですがほとんどの人には長すぎると思います。また、長さが60cmもあると道路交通法の関係で歩道走行は違法になります。実用上も人や物に当たるリスクが高くてメリットがない方が大半と思われます。購入時に自転車屋さんに頼んでカットしてもうことをオススメします。54~56cmくらいでしょうか。

車体重量は重い

 車体重量ははっきり言って重いです。「ディスクブレーキ採用の折り畳み自転車」であることを考えればカタログスペック記載の11.7kgは十分軽いです。しかし、純粋に輪行時など持ち上げる重量としては重いと言わざるを得ません。

 この車体重量ゆえに輪行時は持ち方に注意が必要です。持ち上げ方や肩紐の掛け方など荷重が極力偏らないように注意しないと腰を痛める可能性大です。また、変に傾ける持ち方をするとフレームを固定しているマグネットが重さで離れてしまうのでフレームを抱え込むように持った方が良いです。

 なお、車体重量の「実測」については購入時からカーゴラックを装着していたり、ホイールなど仕様変更しているので正確な計測はできていません。購入時のカーゴラック込みで仕様変更した状態だと13kgはありました。さすがに頻繁な輪行だとキツイので行き先や走行距離と勘案してK9Xと使い分けています。

 一応、P10の名誉のためにフォローしておくとディスクブレーキ採用の折り畳み自転車なのでこの重量はやむを得ないと思います。価格や使用パーツからして折り畳み機能がなければ10kg前後のハイエンドミニベロ相当になるというモデルだと思います。

軽量化できる幅は限られる

 前項の重量がらみで触れておくとP10は軽量化の幅が限られていると言えます。やりようはありますが大幅軽量化というのは難しいでしょう。

 まず、本体については高剛性かつ折り畳み機構を備えているフレーム自体がそれなりの重量になると思います。そこに今まで触れた高品質パーツを最初から採用していての公称値11.7kgという車体重量です。一つ上のハイエンドモデルに「Verge X11」という約40万円するモデルが存在します。形状は同じですがフレームに使用されているアルミ素材が異なり、SRAM「Force 1」という軽量・高性能コンポを採用するなどこれでもかと積んだような構成です。その車体重量が10.2kgだそうです。何がとは言いませんが一つの参考値にはなるでしょうか。

 これらを鑑みるにtern公式サイトの「バランスの取れたベストフォールディングバイク」は仕様と価格からも非常に的を射た表現に思えます。

結論:最初から全部載せの完成度が高い折り畳み自転車

 以上、Verge P10の特徴や使っていて気になった点などを列記してみました。色々書きましたが結論としては「最初からこれを買っておけば満足できる折り畳み自転車」です。細かい箇所で気になる部分はありますが最初から欲しいものが全て揃っているというモデルです。しかも、折り畳み自転車では貴重な油圧式ディスクブレーキ採用モデルでもあります。また、ほとんどの方は不要と思いますが、カスタムしたいという場合も各種仕様により拡張性が担保されているのも特筆すべき点だと思います。

 車体価格は20万円と高価ですが、折り畳み自転車としては剛性の高いフレーム、451規格の上位グレードホイール、ワイドレンジギア、油圧式ディスクブレーキ採用など最初から非常に充実した車体構成となっています。10万円前後のモデルも後からカスタムしていけば相応に費用が嵩んでくるので最初からVerge P10を購入してしまうのは有りでしょう。