数年前から参加したいと思っていた「塩の道祭り」に参加しました。この「塩の道祭り」は毎年ゴールデンウィーク期間中に行われており3日は小谷村、4日は白馬村、5日は大町市でかつての「千国街道(塩の道)」を歩くというイベントです(申込み・参加は各々別途)。自分がサイクリングにハマり出した頃から興味があったのですがスケジュールや感染症流行による中止などからようやく今回参加できました。
*糸魚川市でも「糸魚川塩の道・起点祭り」というイベントがあります。
*本記事はイベントについてのお話をメインに扱います。後日、撮影した石仏やスポット、道の状況・道標などについて補足の記事を書く予定です。
*今回はイベントルートの関係から「糸魚川市方面→松本市側」の順で歩いております。
参加したのは小谷村の「2022年 第43回塩の道祭り」
私が参加したのは小谷村で実施された「2022年 第43回塩の道祭り」です。翌日、翌々日に白馬村と大町市でも同様のイベントが実施されます。本当は3カ所とも参加したかったのですが小谷村以外は事前申込み制でキャンセル待ち状態でした。定員は不明ですがおそらく感染症対策から少数催行なのだと思われます。今回、小谷村の祭りに参加できたのは事前申込みが不要だったため。
個人的には小谷村エリアの「塩の道」の詳細を把握するのが最優先だったので渡りに船でした。大町市と白馬村はサイクリングで回るなどある程度把握できており、実際に回ることもできています。後述しますがおそらく「小谷村」と「白馬村・大町市」はコース難易度がかなり違っていると思います。
「千国越えルート」とは
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今回歩いたのは「千国越えルート」と呼ばれるコースです。概要としては栂池高原の松沢口から小谷村の下里瀬の約9kmの区間です。塩の道にはルート分岐によりモデルコースが設けられていますが比較的歩きやすいコースとされています。本イベントでは復路(松本市方向)を歩いていますが往路の糸魚川方向に進むと下り主体で楽になります。
このコースはいくつもの石仏・牛方宿・千国番所跡・史料館・郷土館など見所も多々あります。道も整備されている方なので交通アクセスを考えるとまさにイベント向きのコースと言えます。
スタートから割とハード……
スタートは「下里瀬基幹センター」という場所です。小谷村の国道沿いローソンの裏にあたります。南小谷駅と栂池中央駐車場からはスタート地点までのシャトルバス送迎も出ていました。私は電車移動なので南小谷駅からのシャトルバスを利用。
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駅前の国道の横になにやらトンネルが見えます。いずれ開通する高規格道路「松本糸魚川連絡道路」のトンネルでしょうか?
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駅ではイベント案内・コースMAP・記念品を受け取りシャトルバスでスタート地点に移動。ちなみにJRの「駅からハイキング」も一緒になっているイベントでした。後述しますが昨年ハロウィン時期に参加した「旧篠ノ井線廃線敷ウォーク」とはだいぶコース難易度が違いました……。
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ランダムと思われますが配布されたバッジにはHIGH RAIL 1375と小海線キハ110がデザインされていました。「ここはキハ120だろっ!!」と心の中でツッコミ。
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スタートは受付終了後に各自バラバラに出発します。従来がどういう流れかわかりませんがバスでの到着タイミングや感染症防止対策としてそういうものなのでしょう。
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スタートしてすぐに未舗装路区間に突入。所々、ぬかるんでいたり急な登り坂があるなどスタート序盤にしては非常にハードです。視界の正面が地面というくらいには急な坂です。中盤以降は急坂でもそこまで道の状態が悪くなかったので序盤がキツさのピークだったと思います。
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このイベントでは復路を歩くので登り坂の比率が多いのも特徴。代表的なものを挙げれば「親坂」、「和平北」、「虫尾阿弥陀堂」の前後などはなかなかの斜度でした。どの未舗装路もすぐ横は斜面で道幅も狭く往時は牛を引いて歩いていたと思えない道でした。
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とはいえ舗装路も舗装路で坂なんですけどね……。さすがはヒルクライムでアピールしている地域です。
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高低差がエグい……。
標識など道標が充実している
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この千国越えルートに限りませんが大町市〜小谷村、糸魚川市の区間は一定間隔ごとにこのように塩の道の道標が設置されているのは非常にありがたいと思います。
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舗装の上にもこのように表記がされています。
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特に国道などの舗装路と未舗装路の境界や山道の中にも設置されているのでルートミスや道迷いのリスクは低いと言えます。
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未舗装路の入り口が見つからないのはともかく、山道の中で目印が無いと下手すると遭難に繋がるのでこのあたりの道標の有無は重要だと思います。(とはいえガイドさん的にはもう少し道の整備など資金を投入して欲しいとか)
名所・名物など見所のオンパレード!!
この千国越えルートは道が整備されていることもあり石仏・史跡・資料館など見所満載なルートです。冒頭で触れた通りコース詳細は後日別記事で扱う予定なのでここではかいつまんで紹介。
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名所ではありませんが歩荷・飛脚姿に扮した地元の方は本イベントの見どころと思いました。現代の目で見れば決して快適な装備ではないと思えますが往時の街道の様子をイメージすることができます。また、飛脚姿の方々も掛け声と共に急な坂道を元気に駆け抜けていました。当時はもっとハードだったのだろうな思いつつ眺めました。
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こちらは「千国番所」および「千国の庄史料館」。千国番所は松本藩の出先機関で街道上の要所に位置づけられていました。明治2年に廃止されるまで280年にわたり塩や海産物や人の出入りなどの管理を行っています。本来の番所は道を挟んだ向かいになりますが実際の民家を移築した史料館と同じ場所に再現されています。
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観光案内などでよく見かける番所内のジオラマ人形。ここで調書をとったり手形の確認をしたのでしょう。
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番所ということで不審者等を取り押さえるための「さすまた」など捕具も置いてあります。最近だと「ちいかわ」でピンクの柄のかわいい刺又が出てきていますがこちらはガチですね。捕らえるための道具ですがトゲトゲが痛そう。実際にはどれくらい出番があったのでしょうか?
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人が写ってしまうので遠目の位置からですが「牛方宿」。ここで牛方と牛が休憩していました。街道沿いには多くの牛方宿があったそうですが国道開通に合わせてどんどん姿を消し、現在ではこの牛方宿のみが残っているとのこと。
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牛方宿内の牛舎スペース。ここで牛を休ませていたわけですね。
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牛舎スペースの向かいには今で言うロフトスペースがあります。牛方はここで牛の様子を見つつ休憩したそうです。そのほか、人が写っているので写真は載せられないのですが入り口の扉も不審者侵入防止・牛の出入りのしやすさなどを考えた面白い構造でした。
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こちらの囲炉裏の火は本物です。今回のために実際に火を入れているとのこと。この距離と見た目ですがじんわりと火の熱が伝わってきます。室内には煙の匂いが充満していました。扉を開けて換気していましたがそれでもかなりの匂いがあるものでした。
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囲炉裏の上には「ひやま」という物を載せる板が吊り下げられています。囲炉裏の火の強さと煙を感じればよく乾燥するであろうことがわかります。
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お庭の景色も良い眺めです。ありきたりな表現ですが田舎の原風景。
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牛方宿の横に併設されている「塩蔵」。塩蔵は先述の「千国番所」および「千国の庄史料館」にもあります。休憩時は塩をここに保管したそうです。建物の腐食を防ぐために塩蔵は釘などの金属は使用せずに建てられています。壁には薄っすらと白いものが付いていますが「建物内の塩気が外側に表出したもの」だそうです。
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こちらはゴールである栂池高原近くにある「前山百体観音」です。江戸時代の建立とされ西国三十三番、秩父三十四番、坂東三十三番を模した合計百体の観音像が並んでいたそうです。現在は約八十数体が残っています。
大町市・白馬村境の佐野坂に残っている「西国三十三番観音像」と同じく伊那高遠の石工によって制作されたそうです。横にずらっと並んでおりカメラの画角に収まりません……。
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前方の弘法像は1858年の建立らしいですが百体観音自体は具体的は建立年は不明とのこと。制作には大町市から小谷村という広範囲の人々が関わっていたそうです。この当時の人々の信仰心の厚さを伺えますが、それは同時にこの街道における行き倒れ・事故・災害など過酷さの顕れなのだと思います。
ガイドさんがいた方が心強いかも
私の前に塩の道のガイドさんを同伴(?)されていた方がいました。どうやらガイドのボランティアの方がスタート地点にいたらしいのですが気付かずにスタートしていたので詳細不明。後ろにくっついていた関係からガイドさんのお話を便乗して聞きながら歩きました。普通に歩いていたらスルーしてしまうスポットのお話を聞くことができイベント外で歩く際もガイドさん同伴の方が心強いのだろうなと痛感しました。登山と同じで単独行動リスクを避けられることもありますし、公式でも平岩駅近辺の大網峠コース・地蔵峠コースはガイド付きで歩くことが推奨されています。
ガイドさんのお話を聞きながら『徒然草』に出てきた仁和寺の法師のお話を思い出しました。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり(意:簡単・些細なことにも、指導者というものが必要なものだ)」。まさにその通りだと思いました。
ガイドさんを雇うのが難しいという場合は少なくとも地図や案内の資料や書籍は準備すべきだと思います。名所をスルーするだけならまだマシですが道に迷ったとなれば危険ですので。いくつか関連書籍はありますが『塩の道 歩けば旅びと 千国街道をゆく』が比較的わかりやすい資料だと思います。今回もこれを持参・活用しています。そもそも無いと回れない。
参加して大正解なイベントでした!!
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各資料館・史跡・石仏・風景で撮影兼ねての寄り道しつつ無事にゴール。所要時間は寄り道ししつつ約4時間でした。春の穏やかな気候の下、サポートを受けつつ各資料館・史跡・石仏を回ることができ楽しかったです。また、現代の私たちがイメージする「道」と当時の「道」は別物なのだとよくわかるイベントでした。
参加しておいて言うセリフでは無いのですが田舎の山道をただ歩く(登る)というニッチなイベントです。どのくらいのボリュームのイベントかわからなかったのですが思っていたより参加者が多くて驚きました(約1500人らしい)。従来は3500人ほど参加していたらしいので少ない方ですがエリアを考えると十分な多さです。小谷村でもこのボリュームだったので白馬村・大町市だともっと多いのかなと思いました(あちらはさらに歩きやすいので)。
今の時期はニュースでも報じられていますが長野県内だけでも善光寺のご開帳、諏訪大社の御柱、穂高神社の式年遷宮などイベント尽くしです。ただ、それと同時にどこも凄まじい混雑であることも報じられています。今回参加したイベントは参加人数の割にはそこまで混雑感が無く、他イベントと比較すれば快適かつ落ち着いた時間が過ごせました。スタート序盤さえ切り抜ければゴールまではなんとかなると思うので出かけたいけど混雑を避けたいという場合には良いイベントかもしれません。
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ちなみにイベント後は白馬駅に向かうついでに栂池高原〜白馬駅の区間も歩きました。そちらはまた別記事で扱う予定です。