2万円台で買える高性能な液晶ペンタブレット HUION 「Kamvas 12」レビュー

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 以前にHUION「Kamvas16(2021)」のレビュー記事を上げましたが今回は「Kamvas12」という液晶ペンタブレットのレビューとなります。実はこのたびHUION様より実機をご提供いただいた次第。実機を確認する前は11.6インチサイズという小ささに若干の不安がありましたが使ってみたら予想以上に使いやすい高性能な液晶ペンタブレットでした。

「Kamvas12」の特徴

 まずはザックリと「Kamvas12」の特徴について。

  • 11.6インチサイズのフルHD(1980×1080)解像度液晶ペンタブレット
  • 視差が改善されたフルラミネーションディスプレイ
  • 筆圧8192レベル、傾き検知±60度のペンタブ性能
  • 本体には8個のショートカットキーボタン
  • USB-Cケーブル1本での接続も可能(*使用するPCの仕様による)
  • スタンドなどお絵かきに便利なオプション品付属
  • 価格は2万円台(*時期によって割引あり)

「豪華版」を強くオススメします!!

 こちらが「Kamvas12(豪華版)」のパッケージ。まず大事なことですが「Kamvas12」には通常版と豪華版がありますが「豪華版」を強くオススメします。

 両者の違いはスタンド・「USB-C to USB-Cケーブル」・その他オプション類の有無です。価格はAmazonでそれぞれ豪華版23,799円、通常版21,249円となっており差額も大きなものではありません。スタンドを含めイラストを描く上で便利なアイテムばかりなので特段の事情が無ければ豪華版を選んだ方がお得です。

*通常版については本体カラーをブラックorオレンジから選択できます。豪華版はブラックのみ。

*製品価格は2021年12月10日時点

付属品について

 本体・ペン・ケーブル以外の付属品です。マニュアル類・2本指グローブや付箋などが付属。なお、豪華版では液晶クロス・2本指グローブのカラーが赤となっています。

 これらの付属品の中で特に便利そうだと思ったのがこちらのシールです。これは本体ショートカットボタンに貼るためのシールです。設定をどのボタンに割り振ったか一目で分かります。慣れれば必要無いと思いますが液晶ペンタブを導入したての方には便利なシールだと思います。

 こちらも豪華版に付属するスタンドです。単品で購入する場合は約5,000円のようです。

 スタンドはシンプルな構造で20°〜45°の6段階で調整可能です。スタンドの有無で絵の描きやすさがガラリと変わります。液晶ペンタブレットは視点に対して適切な角度が付いていないと描いたものに変なパースが付いたり、姿勢が悪くなるなど不具合が生じるので必須のアイテムだと思います。そういった意味でも繰り返しになりますが「豪華版」を強くオススメします。

 こちらがケーブル類一式。「ACアダプター」、「電源用USBケーブル」、「3in1ケーブル」、「USB-C to USB-Cケーブル」が付いてきます。

 なお、「USB-C to USB-Cケーブル」は豪華版のみに付属。給電機能対応のUSB Type-Cであればこのケーブル1本で接続ができます。

 ペン(PW517)とペンスタンド。ペンスタンドはドーナツっぽい形状でペンを写真のように寝かせて置いたり、中央のくぼみに差し込んで立てたりできます。

 ペンは「PW517」という最新のペンです。私は使用したことがありませんが旧型よりもペンの沈み込みが無いなどの改良がされているとのこと。ペンには2つのサイドボタンが付いておりドライバソフトで任意の機能を割り振ることができます。ワコムなどのペンと異なるのは消しゴムが付いていないことくらいです。消しゴムはショートカットで切り替えるので無くても困りません。

 ペンスタンドは蓋を開けると「替え芯」と「芯抜き」が入っています。

液晶ペンタブ本体について

 Kamvas12本体は330.25 x 197 x 11.8mmというサイズ。重量は735gで非常に持ち運びしやすいです。持ち運びをしなくても作業スペースの関係から常時出しっぱなしにできないケースなどで取り回しに優れます。

 MacBook Pro16インチの前に置くとこのようなサイズ感です。一般的な13インチノートパソコンあたりと同じサイズ感と思ってもらって良いでしょう。

 本体背面は四隅に滑り止めが付いたシンプルなデザインです。豪華版はブラックのみですが通常版だとオレンジカラーも選択可能です。

 液晶の横には押しボタンタイプのショートカットボタンが付いています。特に押しにくいということもないので今までもショートカットボタンを使用していた方には活用しやすいと思います。

液晶ディスプレイについて

 描画領域となる液晶サイズは256.32 x 144.18mmの11.6インチサイズです。

 液晶解像度は1920×1080フルHDです。色域はsRGBカバー率120%AdobeRGBカバー率92%です。下手なノートパソコンのディスプレイよりも高い色域を備えています。

 11.6インチサイズに1920×1080の解像度なのでドットの粒状感はほとんどありません。「擬似4K」みたいな見た目です。ただ、ドットが目立たない代わりに文字などは写真のように若干滲んだような感じです。これは写真がブレているわけではなくこういう表示です。イラストを描く分には問題ありません。

 一昔前のエントリー〜ミドルレンジの液晶ペンタブレットは良くてもAdobeRGBカバー率70%台という色域でした(それでも10万円前後の価格帯です)。違う液晶画面と並べると色が全然違っており色に関してはあてにならないという具合です。それに対してKamvas12はパッと見て違いをほとんど感じません。また、本体サイズは液晶ペンタブレットとしては小型なので「モバイルモニター」代わりにも使えると思います。

パソコンとの接続について

 接続に関しては一般的なパソコンでは上のような「3in1ケーブル」と「電源用ケーブル」を使うことになります。

 「3in1ケーブル」には映像出力用のHDMI、ペンタブ機能用のUSB-typeA(黒)、電源ACアダプター用のUSB-typeA(赤)の端子が付いています。この繋ぎ方は以前からワコムなどでも採用されている一般的なものです。

 お使いのパソコンのUSB Type-Cが「USB PD(USB Power Delivery)」という給電機能対応ならUSB-Cケーブル1本で接続ができます。他にもThunderbolt3や4に対応していれば接続は問題ないでしょう。どれも見た目は同じUSB Type-Cなのでパソコンの仕様を確認する必要があります。

 「USB PD(USB Power Delivery)」は最近の10万円前後のWindowsノートPCでも採用機種が多いようです。USB-Cケーブル1本接続だと配線がスッキリしコンセントも埋まらないのでメリットは大きいと言えます。

 そのほか、こちらの製品はPC電源を入れてからHDMIケーブルを抜くと「板タブモード」になるという機能もあります。USB-Cケーブル1本接続の場合は本体の電源ボタンをOFFにするとモードが切り替わります。

 実際にMacBook Proと接続したものがこちら。「USB-C to USB-Cケーブル」1本で映像出力と電源を賄うことができスッキリした配線になります。

設定について

 他のペンタブ製品同様にドライバソフトをHUION公式サイトよりインストールします。ドライバで画面やショートカットボタン、ペンボタンの機能の割り振りなどをします。

 作業領域の「回転設定」を180°にすると左利き用に設定可能。

 私はショートカットボタンは使っていませんがペンのサイドボタンに「画面の切り替え」を割り振っています。こうすると各画面のカーソルの行き来をペンを持つ片手でできるようになります。ちなみに設定の際に「画面」が「畫面」の表記だったので見つけるのに若干苦労しました。

 そのほか液晶の輝度などは本体のショートカットボタンで設定を変更することができます。

実際のイラスト制作作業レビュー

 実際にイラストを描いたりして使用してみましたが思った以上に使いやすかったです。液晶サイズの小ささからラフ・下書きなど全体を見るような作業で狭さを感じましたがペンの筆圧感知レベルの高さと相まって描画について快適な使用感でした。

 特に筆圧感知レベルが「8192」というプロ製品同等の高い数値なので無理に力を入れなくても思った通りの線が描画できます。このペンのスペックは水彩画のような微妙な濃淡を出したいという方にもメリットが大きいでしょう。アプリに依存する部分はありますが上の動画のように「掠れたような細い線」も問題なく引けます。筆圧感知レベルが低すぎるとこういった線を引くのも苦労するので筆圧が弱い人間には大助かりです。

 また、アンチグレアフィルムが最初から貼られていることから表面はサラサラした描き心地です。液晶ペンタブレットではありませんが「iPad+Apple pencil」のゴムっぽい感じの描き味よりは扱いやすいと思います。今回はレビューということでそのまま使っていますが「紙のようなザラザラ感」が欲しい場合は「ペーパーライクフィルム」を貼っても良いでしょう。

 また、本製品は「フルラミネーション液晶」なのでペン先と画面のカーソルの距離、いわゆる「視差」が少なく描画時のギャップがほとんどありません。公式サイトには精度「センター:±0.5mm、コーナー:±3mm」と記載がありますが画面中央で描く分には気になりません。画面の端っこだと僅かにズレが生じますが隅っこで描く人はいないと思うので問題ないと思います。また、ペンのカーソル位置についてはドライバソフトでも調整が可能です。

 ワコムのCintiq13HDなど一昔前の液晶ペンタブレットはパネル表面とカーソルの間に大きな隙間がありましたがその頃と比べると雲泥の違いです。特にこの価格帯の製品でこれを解消しているのはすごいことだと思います。使ったことがない方にはわからないと思いますが「視差」に関してはアナログからの移行だと真っ先に気になる部分です。本製品を初めての液晶ペンタブレットとして導入する場合でもほとんど違和感無く使用できるでしょう。

小さい液晶サイズのメリット

 原則として「大きいサイズの液晶ペンタブレット」の方が作業効率が抜群に良いです。特にラフや下書きなど全体を見渡すような作業では見やすさに大きな違いがあります。作業スペースと資金面で導入可能なら迷わず大きい液晶ペンタブレットをオススメします。ただ、趣味で描いている方やこれから液晶ペンタブレットを導入するという方だと机の広さに制限があることも多いと思います。そういった方にはKamvas12はオススメできると思います。本体サイズもミニマムなので使用しない時は作業スペースの脇に立てかけておくこともできます。

 ちなみに私は以前Cintiq24HDという24インチサイズの液晶ペンタブレットを使っていたことがあります。作業効率性はとても良かったのですがそのサイズゆえに設置は大変でした。また、修理などで搬出が必要になった時も大変だった記憶があります。この時の苦い経験もあるのでどんなに快適でも20インチサイズが限度かなと思っています。Kamvas12に関してはノートパソコンとセットでも余裕でモバイルできるのでそういう苦労は無いでしょう。

 ただし、液晶サイズが小さいことには違いないのでKamvas12の画面にツールパレットなど全てを表示させるとさすがに狭いです。また、液晶ペンタブはその特性上、画面を近い距離で見続けることになるので液晶の「輝度」を暗くするなどの工夫も求められます。そういったことから色確認やツールパレット置き場としてノートPCや外付けディスプレイの併用は前提だと思います。

気になる点

 使ってみて気になる点と言いますか欠点のようなものは正直ありませんでした。液晶サイズという物理的なものから作業によってはどうしても使いにくい部分は出てきますが「ペンで描く」ということに関しては何も問題ありませんでした。私は今までワコムのCintiq12という製品からiPadも含めていくつかの液晶ペンタブ製品を使用してきましたがこの価格でこのクオリティなら文句無しだと思います。11.6インチという液晶サイズを許容できるかによりますが初心者以外の方でも不満のない描画性能だと思います。

まとめ

 使う前は液晶サイズの小ささに不安がありましたが思った以上に使いやすくペンのスペック、ディスプレイ品質、接続のスマートさなど総合的に満足できる製品でした。これだけの内容で2万円台という価格は非常に魅力的です。液晶サイズの関係から使い方に若干の工夫は必要ですが初めて液晶ペンタブレットを導入したい方、デスクスペースに制限がある方などにKamvas12は非常にオススメできる製品だと思います。

*通常版はスタンド付きもあるようです。ややこしいですがスタンド付きのリンクを貼っておきます。ただ、値段が変わらないので本体カラーを選びたいという人以外は豪華版で良いと思います。