ミニベロで履ける太いタイヤ「SCHWALBE SMART SAM(スマートサム )20インチ(406)×2.35」 使用レビュー  クセ強めで使用場面を選ぶタイヤ

 ミニベロで太いタイヤとなると20インチ(406サイズ)だと2.0(5cm)くらいのタイヤ幅です。それ以上のタイヤ幅のものを探すと自分の知る範囲ではサーファスの「トラッカー」くらいでしょうか。製品が存在したところで、その太さのタイヤがフレームなどに干渉しないかという別問題もあります。ネットでタイヤ情報を漁っていたところシュワルベから「SMART SAM(スマートサム )」なる製品が20インチサイズで存在するとのこと。

 私が乗っているミニベロ「グレイシア」はフレームのクリアランスからタイヤ幅2.3インチ(5.8cm)のタイヤは履けます。それよりわずかに太いタイヤが入るのか、どのような走行感覚なのか興味が出てきたので通販で購入してみました。

シュワルベ SMART SAM(スマートサム )

今回入手したのはシュワルベの「SMART SAM(スマートサム )」というタイヤ。その見た目でその名前なのか?と突っ込みたくなるくらいにブロッックが付いたタイヤ。マウンテンバイクカテゴリでタイヤ幅が2.35インチ(5.9cm)。重量は実測で582gでした。代理店サイトの製品紹介を引用すると以下の通り。

オンロードでの転がりとオフロードの使用を両立したモデル。最適化されたトレッドパターンは、ハンドリング特性が向上し、E-MTBにおいても快適にご使用いただけます。

http://g-style.ne.jp/item.php?brand_id=16&item_category_id=9

 サイトを確認すると20インチは確認できないので正式に日本には入ってきていないようです。今回購入したものは並行輸入品というものでしょうか? このあたりは詳細不明です。(私が購入した販売サイトを後日確認したところ在庫切れのステータスでした)

 27.5インチ、700C、29のサイズなら通販などで手に入るようです。

 上の画像の左がスマートサム(幅2.35)、右がシュワルベマラソン(幅1.75)。スマートサムはタイヤのセンターにブロックが一列に配置された特徴的なパターンです。これによって舗装路での転がりも良くなるということでしょうか。

 対応空気圧は1.6〜3.5bar(23〜50psi)とミニベロタイヤとしてはかなり低い空気圧設定です。

 タイヤの質感はかなり柔らかいです。手前のシュワルベマラソンと触って比べると雲泥の差。シュワルベマラソンは硬い質感ですがスマートサムはプニプニとした風船のような感触です。クッション性は高そうですが耐パンク性能は期待できないかなという印象。あとでサイトを見ると耐パンク性能の項目が低かったので見立てとしては間違っていなかったようです。

 シュワルベマラソンは個体差がありますが重量が630g〜680gでスマートサム(582g)より重いという結果。パンク対策ベルトが入っていることも要因ですが、その重量差と質感からも耐パンク性能の程が伺えるということなのでしょう。そういえばグレイシアが最初に履いているカルンバもシュワルベマラソンどことなく似ています。

クリアランスは実用上ギリギリ

 タイヤを装着しました。なかなかゴツい見た目になりました。と言ってもサーファスのトラッカー装着時とそこまで変わりません。

 クリアランスはフレームについてはまだ余裕があります。フロントは1cmくらいは隙間があります。フレームとのクリアランスから前に451化した時とほぼ同等。タイヤ込みの直径としては451ホイール相当と言えそう。

 リアもフレームについては大丈夫です。多少たわんだとしても当たることは無いでしょう。

 チェーンの方は若干怪しいかもしれません。一番軽いギアに入れても余裕がありますが、チェーンがバタついた時は当たるかもしれません。また、ホイールの着脱時に太いタイヤのおかげで突っかかります。これ以上の太さでもまだ入りますが、実用面を考えると今回の2.35インチ幅が限度と言えそうです。

重さを感じる走り心地(実走レビュー)

 実際に舗装路と未舗装路(主に砂利道)の両方を走ってみましたが、全体的に「走りの重さ」が気になりました。タイヤの太さ・エアボリュームのおかげでミニベロの割には路面の段差、大きなひび割れなどもだいぶ振動を緩和して通過できました。砂利道も特にそこまで不安を感じさせるものも無く走ることができました。確かな安定感はあります。

前方をカモがトコトコと歩いていました。

 ただ、シュワルベマラソンなど今まで使用してきたタイヤと比較して極端に漕いでから失速するまでが早いです。漕いでも漕いでも速度が上がっていかない感覚。自分の体調が悪いのか、自転車の他の箇所が故障しているのかと疑うくらいには体感できるものです。元々、ミニベロは巡航速度の維持が苦手ですが、それに輪をかけて速度の維持ができません。

 登り坂も何ヶ所か登りましたが地味に大変。登れないことはないのですが、他タイヤでの走行感覚を知っているので余計にキツく感じます。また、下り坂においても一定の速度に達するとそれ以上は速度が伸びません。今回の場合だと時速33km(ログ確認)が上限でした。これは斜度や自転車によって変わる部分ですがロードバイクなどに代表されるグングンと加速していくことがありません。ポジティブな見方をすれば過剰に速度が上がっていかないので安全性が担保されるともい取れます。しかし、安定性云々の前に疲れてしまいます……。

 走っている時に感じる重さの原因はおそらくですがセンターに一列に並んだブロックだと思われます。舗装路を走る際にジャリジャリジャリ……とブロックの摩擦音が聞こえてきて明らかに抵抗が発生しているのがわかりました。これは下り坂の時も同様。ブロックが転がり抵抗として作用していたのでしょう。

 タイヤ幅2.3のサーファスの「トラッカー」という似たようなタイヤがあります。トラッカーもギャリギャリと摩擦音が響き、下りでも過剰に加速していかない特性があります。しかし、よく比較してみるとタイヤのパターンと転がり抵抗もだいぶ違いがあります。スマートサムほど重さを感じるというほどではありませんし、舗装路・未舗装路も割と同じ感覚で走れます。似たようなタイヤでもこればかりは実際に乗ってみないとわからないものです。

 あと、未舗装路においては最初に書いたようにクッション性が高さから問題なく走れましたが、耐パンク性には不安があるのであまり無理はできないと思いました。

 以上のことは他のタイヤを知っているのでそのような感想を抱いたわけですが、知らなければそういうものだと特に問題にならないのかもしれません。(結局、ひとしきり走った後はトラッカーに戻しました)

オンロード・オフロードの両立は難しい

 スマートサムで走ってみた感想としては何とも微妙なものでしたが、短距離のオフロードや街乗り用途なら特に気にならないと思います。個人的にはこれでロングや坂道は登りたくないですし、そういうタイヤでもないのでしょう。また、値段・入手性・使い勝手を考慮するとシュワルベのマラソンやビッグアップル、サーファスのトラッカーで十分だと思います。タイヤを替えても所詮はミニベロなので無理はできませんし。

 最後に今まで自分が色々と使ってみての私見と言いますか現時点での結論ですが、オンロード・オフロードをバランスよく両立するならWTB「BYWAY」のようなセンタースリックのタイヤが最適なのだと思います。もしくはパナレーサーの「グラベルキング」のようなタイヤ。山道ですら舗装されている日本の道路環境では「舗装路での走行性」に振った方がトータルの使い勝手が向上します。そう考えるとセンタースリックでサイドにブロックが付いているようなタイヤが一番バランスが取れるように思えるのです。ミニベロでそういうタイヤがあれば試してみたいところです。