insta360 X4 レビュー 360度撮影アクションカメラの完成形 サイクリングなどで使用した感想

 insta360 「X4」を発売と同時に購入しました。購入から主にサイクリングで使用してきました。360度撮影アクションカメラとしては完成の域に達したというのが使用してみての率直な感想です。購入前はただのマイナーアップデートだろうと思っていましたが、実際に使ってみると全体的に画質が向上しX3とは別物というレベルです。通常のアクションカメラと同じ使い方しかしていませんが、前に扱った前機種X3との比較も交えてレビューしていきます。

結論:X4は360度撮影アクションカメラの完成形(2024年時点)

 冒頭の通りX4は「360度撮影ができるアクションカメラの完成形」に達した製品だと思います。360度撮影という独自性はそのままに前機種X3から画質が大幅にアップデートされており、そこらへんの下手なアクションカメラよりもきれいに撮れます。特にX3で非常に気になった「色調」が大幅改善されたので、シングルレンズモードをはじめ各モードの画質が別物レベルで良くなっています。また、メインで使用するであろう360度レンズモードの5.7K解像度ではフレームレートが60fpsに対応したのでアクションカメラとして遺憾無く性能を発揮できます。細かい部分と気になる点は後述しますが360度撮影も撮りたいという場合は本製品一択と言えます。

X3より画質は大きく向上

 前機種のX3よりも画質は格段に良くなっています。対応する解像度とフレームレートがアップデートされたことが大きいと言えます。また、全体的に「色調」が改善されたことも見逃せない要因だと感じました。

 X3の時は解像感はもとより色調がイマイチで格安アクションカムと似たようなクオリティでした。それがX4になって同じXシリーズなのかと疑うくらいに良い意味で別物となっています。

5.7Kはフレームレートが60fpsに対応

 個人的なX4の最大の注目点は5.7K解像度設定でフレームレートが60fpsに対応したことです。アクションカメラは動くものを記録することが目的なのでフレームレートは無視できません。パラパラ漫画の枚数の違いみたいなものです。この数字が小さすぎると映像がカクカクしてしまうのでこの数字がとても重要です。

 前のX3は30fpsどまりでサイクリングレベルでも横を通り過ぎる木々、葉、看板の文字など目で見てわかるくらいにはザラつき、カクつきを感じました。

360度撮影モード5.7K解像度設定で撮影

 これがX4で60fpsにフレームレートが向上したので動くものをさらにきめ細やかに捉えることができています。実際に撮れた映像を確認するとやはりアクションカメラとしては60fpsはほしいところです。あれ? この後で触れる8K解像度設定ってフレームレートが30fps……。

360度撮影モード5.7K解像度設定で撮影

 ちなみになぜ5.7K設定にそこまで注目するのかという話ですが「扱いやすい」というのが理由です。5.7Kで360度撮影した映像を通常画角で書き出すとフルHD相当になります。個人的にはサイクリングならフルHDで十分だと思っています。アクションカメラだと解像度よりもフレームレートが重要です。このサイズだと4Kよりもデータ容量が削減できますしPCの処理負担も減ります。

8K(30fps)はきれいだけど使い所に悩む

360度撮影モード8K解像度設定で撮影

 メーカー側がX4一番の訴求点としている8K解像度ですが正直微妙です。まず、映像はとても綺麗です。360度を8K解像度で撮影するので、書き出し解像度は約2.7K相当になります。5.7KフルHDよりも高解像度になるわけです。

360度撮影モード8K解像度設定で撮影

 実際に記録された映像を確認すると木々の葉や花などの細かい部分の描写力・精細感の違いには目を見張るものがあります。下に桜の時期にX3(安曇野の桜)とX4(白馬村の桜)で撮った動画を貼っておきます。それぞれ桜の花など見てもらうと違いがわかりやすいと思います。X3撮影時と1週間違いでX4が届いたのですが安曇野の桜もX4で撮りたかった……と思うくらいには違います。

 ただし、フレームレートが「30fps」どまりなのでランニングなど激しい上下運動などが発生する場面では若干の物足りなさがあります。サイクリングレベルでも横を通り過ぎる風景に若干のコマ送り感を感じる場面があります。そのあたりを8Kの高解像度でカバーしているということなのでしょうがあと一歩足りていない印象。

 また、8K解像度設定はバッテリーとストレージ消費量の多さも気になりました。5.7Kで撮影した時よりも減りが非常に早いです。使用環境にもよりますがバッテリーは50分持つかどうかというところ。記録用ストレージも購入当初使用していた128GのマイクロSDカードだとバッテリーが切れる前に容量不足で撮影がストップしました。アクションカメラを使ってきてバッテリーより先にストレージが枯渇するのは初めての経験でした。8Kも織り交ぜて使うなら予備バッテリーと大容量SDカードは必須です。

 以上のように8K解像度設定は映像が綺麗なことは綺麗なのですが、バッテリー・ストレージ消費量の多さの割に旨みが少ないなと感じました。8K設定はほとんど使用していません。サイクリングだとフレームレートが足を引っ張ってしまうので先の5.7Kで十分です。きれいなだけに痒いところに手が届いておらずなんとも残念。

8K解像度設定が活かせる場面とは?

360度撮影モード8K解像度設定で公園散策時を撮影した画像

 微妙な評価をした8K解像度設定ですが「徒歩」をベースとしたアクティビティなら強みを生かせると思います。例として挙げるなら旅行やハイキングなどでしょうか。歩くことがベースの場面はフレームレートがそこまで求められないので綺麗な映像を残せると思います。アクションカメラの強力な手ぶれ補正があるのでスマホカメラよりも安定して撮影ができます。

360度撮影モード8K解像度設定で撮影

 春先に参加した長野県小谷村「塩の道祭り」では8K解像度設定で道中を撮影しました。360度撮影による超広角と高解像度により綺麗な映像を記録できました。前に参加した時はスマホカメラでの撮影だったので雲泥の差です。

 上の画像は木崎湖沿いの小熊山から撮ったもの。超広角の広々とした画角でひらけた景色を収められるのは360度撮影の強み。

 ちなみにこの時の撮影では純正の3メートルの超長い自撮り棒を使用しています。使用できる場面は極端に限られますがカーボン製なので見た目より軽量です。高低差を生かす場面では重宝するでしょう。

 そういえば塩の道祭りの時の動画まだ編集してないや……。

発熱はあるけど問題にならないレベル

 GoProをはじめとするアクションカメラで気になるのが「本体の発熱」です。真夏日での使用だと熱暴走・熱停止トラブルの心配があります。X4は使用中の発熱はありますが不具合が出るレベルではありません。

 8K解像度設定は他設定よりもさらに本体が熱を持ちます。それでも真夏日含めて使ってきましたが熱停止などのトラブルには見舞われていません。X4には冷却保護ケースが標準で付いてきますがケースを用意してくるあたりメーカー側も熱対策を意識していると思われます。上の画像のようにケース無しでも大丈夫だったので真夏日以外は問題ないかと思われます。

シングルレンズモードが使い物になる

シングルレンズ4K解像度設定で撮影

 X3では残念クオリティーだった「シングルレンズモード」はX4で大幅に画質が向上しました。AceProやGoProには敵いませんが色調が良くなったこともあり解像度・解像感の粗が目立ちにくくなっています。上を見ればキリがありませんし、AcePro並みのクオリティーだったらそれらの製品の立つ瀬がなくなってしまうわけですが。

シングルレンズのフルHD解像度設定で撮影

 フルHDの解像度設定でも撮影しましたがパッと見た感じでは4Kから大きく劣るという感じはありませんでした。解像度ゆえの粗さはあるのですが色調がX3よりまともになったためか見劣りを感じさせません。データ容量もコンパクトになりますし360度撮影の必要性がない場面でも活用できることでしょう。

4K解像度設定で撮影した映像のスクショ

 ただし、360度撮影モードと比べるとシングルレンズは若干暗く、彩度が濃くなる傾向があるので動画素材として混ぜたときに色調補正は必要かもしれません。360度モードが明るすぎるとも言えますが。

写真撮影機能も使い物になる

 360度画角で写真撮影できますがこちらもX4で使い物になるレベルとなりました。X3の時は何回か使って封印したレベルでしたがそこからまるで別物……以下略。記録以外にも360度でとりあえずパシャっと撮りたいときには安心して使えると思います。Google MAPのストリートビューでたまに見かける360度画像よりもきれいかもしれません。

洗練された各種設定項目

 X3よりも選択できる解像度・画角の種類が減りました。これは専用アプリ「insta360 Studio」も同様。数が減ったというとマイナスに感じますがむしろ使いやすくなったように感じます。実際には使い所がない項目も多かったので良い意味で整理されたという印象です。初めての人でも使いやすくなったと言えるでしょう。

明暗差に弱い

 各モード通して「明暗差」を捉えるのが苦手です。例えば上の画像のように暗がりの山道と空の組み合わせ。青空と白い雲が見事に白飛びしています。特に360度撮影モードは明るい映像になるため「白飛び」がおこりやすい傾向です。ほかにも明所と暗所の切り替わりも詳細を捉えるのに時間が必要です。明暗織り交ぜの環境は厳しいと思っておいた方が良いでしょう。

 他のレビューでも言われていますが暗所撮影・夜間撮影は期待しない方が良いです。前よりマシになったレベルです。まぁ、そもそもアクションカメラで夜にアクティビティをやる層がどれほどいるのかという部分はあります。

最大の欠点:本体の取り扱いに気を遣う

 これは歴代Xシリーズ共通の問題点であり、個人的には最大の欠点だと思っている部分です。その独特な製品形状、特に前後に突き出した球面レンズのためにカメラ本体の取り扱いでは非常に気を遣います。どこかにぶつけようものなら突き出たレンズ部分が真っ先に傷つくことでしょう。下手にどこぞのベンチや台に置くことすらできません。付属のポーチなどクッション的なものは必須です。X4から「標準レンズカバー」が付くようになったので製品保護の部分では改善されていますが性質上どうにもならない部分ではあります。

 自転車やバイクへのマウント方法も気を遣うと思います。前機種からサイズと重量も増えているので変な取り付け方をすればマウントから外れて破損する可能性も考えられます。自撮り棒などに取り付けた際も斜めに傾けただけで大きく重心が移動しているのを体感できます。自転車のハンドルに取り付ける時は垂直に立つように付けていますが、前方荷重や斜めにするのは怖いものがあります。

360度撮影機能が要るかどうかが分かれ目

 insta360の製品ラインナップからアクションカメラを選ぶのであれば「AcePro」か「X4」を買っておけば間違いありません。画質だけ見ればはAceProが上ですが、上で述べた通りX4が極端に劣るというわけではありません。あとは360度撮影機能が必要かどうかで選べば良いでしょう。

セール期間を狙っての購入がおすすめ

 insta360は公式サイトで定期的にセールを行なっています。この記事を書いている時点でも実施中です。また、今回は今までセール対象外だったX4も含まれています。ちなみにお値段は79,800円から75,800円となっています。Ace Proに至っては50,000円です。

 このセールはAmazonや楽天市場、ヨドバシカメラ(ネット通販)なども連動しているようで同額になっています。ただし、Ace Proについてはもうすぐ後継機種が出るようです。そことの兼ね合いになりますが現行機種買っても後悔はしないと思います。

余談:価格と使い方によってはX3を選ぶのもあり

 これから360度撮影機能のあるカメラを買うならX4をお勧めします。ただ、使い方によっては前機種のX3でも良いのかなと思う部分はあります。

 まずは「価格」です。X4は約8万円と非常に高価なのでおいそれと手が出せないのも事実。そうなるとスペックを犠牲にしてもX3を選ぶのは十分な理由になるでしょう。中古市場もあたれば費用は抑えられます。

 「本体サイズ」も重要です。X4より多少はコンパクトなので携帯性でも優位に立ちます。登山などモバイル性を重視したい、荷物の重量を減らしたいという需要には応えられるでしょう。

 最後に「使い方」。岩場などカメラの傷・破損リスクが高い環境、動きの激しいスポーツでの使用を想定するならX4より安いX3は検討の価値があります。使用にあたっての傷・破損があっても精神的・お財布的ダメージが軽減できます。