8月の話になりますが大糸線で「増便バス」が運行されているでどんな様子か気になり、糸魚川市への小旅行で実際に利用してみました。後述しますが運賃は鉄道に準じるので青春18切符も利用可能でした。今回は自転車無しで行ったのですが増便バスも織り交ぜることで、通常ダイヤだけでは回りきれないところも回れたと思います。鉄道の状況次第と思われますが、現状のままなら来年度以降も続けてほしいと思いました。なお、糸魚川市旅行の詳細は後日別記事で扱います。
大糸線増便バスとは?
大糸線の増便バスは2024年7月から実験的に運用開始された臨時便です。白馬駅ー糸魚川駅の区間で時刻表の隙間を補うようにバスを運行することで通常の時刻表の大きな穴を埋めるというものです。
大糸線(JR西管轄区間)は便数が少ない上に大糸線(JR東管轄区間)や北陸新幹線との接続も考慮されていないダイヤ設定。廃線が取り沙汰される路線ですが、そんな状況であればそうなるのもやむなしではあります。ただ、線路規格や行き違いの都合から便数を増やすのは難しいらしく、実証実験的な意味と苦肉の策?として出てきたのが今回の増便バスらしいです。そんなことをしたら余計に鉄道の存在意義を否定しかねない気がしますが、効果など諸々含めての実証実験運用なのでしょう。
この増便バスは白馬駅と糸魚川駅からそれぞれ出ており、通常ダイヤの穴を埋めるような時間帯で運用されています。具体的な時間は上の時刻表看板や公式サイトを確認してください。
今回利用したのは白馬駅を8時30分に出発する便です。糸魚川駅に到着するのは9時45分。白馬駅に8時到着する便に乗ってきたので30分ほど待ち時間があります。
8時30分発だと白馬駅まで乗ってきた電車が終点の南小谷駅に8時20分には到着、つまりは先を越されていることになります。しかしながら、南小谷駅から糸魚川駅に向かう便が出るのは10時4分です。糸魚川駅に着くのは11時3分。増便バスの方が圧倒的に早く糸魚川駅に到着できるのです。
この到着時間の差は滞在可能時間にそのまま直結するので無視できない要素です。昨年参加してきた「大糸線サイクルトレイン」でもこの問題点は指摘しています。9時45分と11時3分という到着時間の差は大きいのです。
予想より大きなバスで運行
出発の10分前には増便バスが停留所にやってきました。マイクロバスみたいな規模感を勝手にイメージしていたのですが、それを裏切る大型バスがやってきてびっくりしました。観光利用をあて込んでいるので大型バスくらい用意しないと回らないかもしれません。特にスキー・スノボの時期なら荷物も増えるでしょうし。
乗車運賃は電車に準じており、駅で切符を買って、バスに乗るときに見せるのが基本のようです。バスでも料金は払えるようですが両替や支払いで時間がかかるなど煩雑になるので駅で切符を買う方が楽です。運賃支払いについては周知が行き届いていない様子が見られ、バスでの支払いで両替含め時間が取られていました。
利用者は連休の時期ということもあり20人ほどが乗り込んでいました。バスの座席としては約6割が埋まった形です。また、大型バスなので車体側面トランクは結構な容量があります。今回もスーツケースや大型登山リュックがいくつも積まれていましたがまだ空きがありました。やはり大型バスでないと無理があるということです。
自転車の輪行も可能とのこと
自転車については輪行袋に収納した状態なら積み込みは可能だそうです(事前にTEL確認した)。ただし、バスの移動中はかなり揺れます。トランク内でガシャガシャ動いたり、転がったりしないよう梱包と積み込み位置は注意した方が良さそうです。ちなみに「転がる」というのは比喩でもなんでもなく文字通りそうなるくらいの揺れということです。先述の大型スーツケース、登山用バックパックなどの荷物にサンドされた方がむしろ固定されて安全かもしれません。
自転車輪行も可能と確認は取れましたが実際にやる勇気が……。
乗り心地は良くない(オブラート表現)
出発したバスは各駅を順次回って行きますが、バス乗車時や駅に近づいた時に「降ります!!」と言わないと簡単に通過します。いわゆる都バスや市内バスのような「降車ボタン」が無いので要注意です。また、中土駅は「サンテインおたり」、北小谷駅は「道の駅 小谷」が停車所となっています。おそらく時間と道路幅(中土駅は旧道沿い)の都合と思われます。
すでに触れましたが移動中のバスはかなり揺れます。国道148号の長いトンネル区間などは曲がりくねっていたり、路面が荒れている箇所があるのでどう頑張って運転しても揺れます。運転手さんもトンネルに入る前にアナウンスを入れていたくらいです。不安な方は酔い止めを服用した方が良いでしょう。
車体幅・道路幅の関係でバスの4分の1程度の幅でセンターラインをはみ出していたのですが、対向車はよくぶつからないものだなとヒヤヒヤしました。バスの運転手も相当な技量が必要ですが、あれが対向車線で来たら怖い。
糸魚川駅周辺を散策したりフォッサマグナパークに行ったりしました
詳細は後日別記事で扱いますが、糸魚川駅に到着してからは周辺を散策したり、根知駅まで戻ったところにある「フォッサマグナパーク」に行きました。
糸魚川駅にも面白いものがあるので駅とその周辺自体も目的地になり得ると思います。
今回は自転車も持ってきていないので公共交通に依存した形です。本来なら時刻表の関係でだいぶタイトなスケジュールになりますが、増便バスで根知駅に早めに移動できたのでフォッサマグナパークも余裕を持って回れました。
その余裕ができた時間で帰りに南小谷駅で寄り道してスマホアプリゲーム「駅メモ!」のグッズを入手したりしたわけです。ちょうど「れんげと巡る美しき姫川渓谷と大糸線の旅」というキャンペーンが実施中だったのです。(※12月11日まで実施中)
デジタルスタンプラリーをコンプリートして南小谷れんげちゃんのキャンペーン衣装もゲット!!
糸魚川駅、南小谷駅など立ち寄った駅には今回利用した増便バス・駅メモ!のキャンペーン告知がされていました。見た目そのままですが南小谷れんげは大糸線の「キハ120」、糸魚川せつかはえちごトキめき鉄道の「えちごトキめきリゾート雪月花」がモチーフです。
急がなければ鉄道旅が良いです
今回の増便バスを使ってみての感想ですが、「急がないなら鉄道が良い」というのが率直な感想です。通常ダイヤでカバーできない部分を大型バスで補ってくれるのは非常に便利です。混雑や荷物状況によりますが一応は輪行もできそうだというのも魅力的。ただ、乗っていて単純に疲労を覚えるのと面白みに欠けるなとも思ったわけです。先述の通り移動中はかなり揺れます。また、長いトンネル区間で外の景色がよく見えません。乗っているだけでも若干の疲労感があります。
私自身が大糸北線に「観光列車」的な側面も見出していることがありますが、姫川沿いの風景を眺めつつゆったり移動できるのは思った以上に大きな魅力なのだとバスに乗ったことで改めて実感しました。増便バスの名誉のために言っておくとバスが悪いのではなく「道」が悪いのだと思います。
実施成果は芳しくなかったご様子
11月に増便バスの実施成果についてニュース記事が出ていました。5ヶ月間で9410名の利用だったそうです。目標の3割弱にとどまったとのこと。スキーシーズンで巻き返しを図りたいようですが、そもそもの目標設定が厳しすぎたのでは?とも思える内容です。
バスの利用者の内訳として関東地方36%、新潟20%、長野と関西地方がそれぞれ13%とありました。利用者内訳については個人的にはイメージ通りの結果と言えます。運行側は北陸新幹線の敦賀延伸に絡み、関西からの来訪を見込んでいたそうですが、あまり関西圏から来るイメージが湧きません。そもそも「長野県に来るのか?」というところから始まり、来るとしても車での来訪な気がします。
ちなみに12月からは冬ダイヤとして「白馬八方バスターミナル」にも停車するそうです。それに伴い千国駅・白馬大池駅・信濃森上駅・小滝駅・平岩駅は通過するようです。まぁ、そこは利用実態や接続時間を考えるとやむを得ないのかもしれません。
鉄道が現状のままなら続けてほしい
実施成果は芳しくなかったようですが、鉄道が現状のままなら来年度以降も続けてほしいと思います。11月に行ったツアーでも増便バスを利用されている方がいましたし、大糸線の時刻表の穴を埋めてくれる利便性は無視できません。ちなみにツアー参加者の方は増便バスがなかったら乗り換えで相当のタイムロスを強いられています。そういった乗り換え先との接続を考えれば続けてもらう意味はあるわけです。おそらく大糸北線の状況次第なのだと思いますが、私としても輪行するかは別として、行き先と乗り換えによっては使うので来年度以降も継続してほしいところです。
余談:個人的に気になるのが「リゾートビューふるさと」で南小谷駅に来た人が降車後にどこへ向かうのか?