DAHON「K9X(ケーナインクロス)」試乗レビュー  非常にバランスの取れた折り畳み自転車 ライバルはK3ではなくデフター

 前に別記事でも触れましたがダホンの折り畳み自転車「K9X(ケーナインクロス)」に試乗する機会がありました。前から気になっている存在だったので楽しく試乗させていただきました。ダホンには似たようなモデル「K3」というものがありますが「別物」と言って良いくらいにバランスの取れた乗り心地でした。K9Xに試乗してみての感想など以下に書いていきます。

K9X(ケーナインクロス)

 「K9X(ケーナインクロス)」はダホンの折り畳み自転車の中でコンパクトさに重きを置いた「Kシリーズ」の一つです。今や売れ筋モデルとなっているK3(14インチホイール)よりもわずかに大きくなった16インチホイール(ETRTO305)、ディスクブレーキ、9段変速を採用したモデルです。さらにK3よりもホイールベースが長くなっているので走行時の安定性を高めていることも特徴です。

※16インチホイールサイズのミニベロだと「ブロンプトン」が有名ですが、あちらは同じ16インチでもETRTO規格349なので別物です。ただ、K9Xはクリアランスに余裕があり349も付くらしい。

バランスの取れた乗り心地

 試乗した感想としては「非常にバランスの取れた乗り心地」だと思いました。まず、K3(14インチ)と比較するとホイールベースが長く、ホイールサイズが大きくなっているので走行安定性は段違いです。また、20インチサイズほどではないにせよ9段変速とディスクブレーキを採用したことにより、K3よりも距離や走る場所を選ばず走ることができます。ハンドリングがさらにクイックになった20インチミニベロというイメージでしょうか。

 ディスクブレーキ採用なのでストッピングパワー以外にも太いタイヤを履けるのも走行安定性に寄与するところと言えます。ブレーキもホイールサイズの関係から効きが強いです。

 K3よりも高い走行性能・走行安定性を確保して車体重量はペダル込みで9.5kgと軽量です。畳んだサイズもK3とあまり変わりません。この軽量性を活かして走るのが難しい箇所を「持ち上げて通過する」ということもやりやすいです。また、右側ペダルは着脱式なので輪行の時に便利で「折り畳み自転車」に求められるものが最初から揃っている感じです。

 総じてK3の軽量・コンパクト性、20インチサイズに迫る走行性能という「良いところ取りしたモデル」だと感じました。(悪く言えば中途半端とも。あれ?どこかで聞いたような……)

ライバルはDEFTAR(デフター)

 記事の冒頭から「K3よりも……」と比較しながら書いてはいますが、比較対象として一番近いのは「DEFTAR(デフター)」だと思います。

 デフターは20インチホイール、キャリパーブレーキ(ロングアーチ)という違いがありますが、車体重量(9.9kg)と価格帯(109,000円)が近いと言えば近い存在と言えます。乗った時の感覚もデフターの方が近いです。見た目とサイズは異なりますがこなせる役割がほぼ被る存在に思えます。

 折り畳む頻度、走行環境、距離で判断が分かれるところですが、走行性能を優先してデフターを選ぶというのも選択肢としては有るでしょう。個人的には輪行・車でのトランポ前提ならK9Xが良いと思います。あとは好みと予算、ちゃんと乗れるかという部分で決めてしまって良いと思います。

K9XとK3は全くの別物

 一番近い比較対象がデフターとして「K3と比べるとどうなのか?」という話をすれば「全くの別物」というのが試乗してみての感想です。似たような見た目ですが、先に触れたホイールベースの関係もあり、走行安定性がK3とは違い過ぎます。実際に乗り比べれば比較対象という認識にはならないはずです。K9Xが発売された今となっては「とにかく軽量・コンパクトな折り畳み自転車が欲しい」という人以外にはK3は選択肢に登りづらいかもしれません。それだけ乗っている時の安定性が違うのです。

 一応、誤解のないように書いておくとK3をディスっているわけではありません。ただ、K3の方が圧倒的に乗る人・乗れる人を選ぶモデルだということです。少なくとも私にはK3は無理。街中の歩道の段差とかでコケて重傷になる。

 

油圧式ディスクブレーキは不要

 ロードバイク界隈だと機械式ディスクブレーキを油圧式にカスタムするというのがありますがK9Xに関しては不要だと思います。どちらかと言えば「やめておいた方が良い」まであります。

 ロードバイクとの比較でホイールサイズが小さいのでディスクブレーキのストッピングパワーが強くかかります。実際にK9X試乗時はディスクブレーキの効きの強さに驚きました。同じ小径車でも20インチのグレイシアのディスクブレーキよりもガッツリと効きます。費用対効果と安全性の面で油圧化の必要性を感じませんし、自転車を折りたたんだ際にフレーム内のケーブル(オイルが充填された)が曲がることによる故障リスクが心配です。

ハンドルグリップは交換したい

 K9Xについて優先して交換するなら「ハンドルグリップ」だと思います。軽量性のためだと思いますが、標準で付いているスポンジグリップは握り心地は良くありません。そこそこ長い時間乗っていると手が痛くなるでしょう。また、そう遠くないうちにスポンジがボロボロになるのは容易に想像つきます。

 定番ではありますが「エルゴングリップ」のような平たいタイプのグリップに交換すれば乗り心地はだいぶ変わると思います。

 ついでに触れておくとサドルは座り心地は良かったのでよほどの理由がなければそのままで良いと思います。シートポストも軽量タイプだし。

タイヤはビッグアップルがおすすめ

 試乗した時の感触としては標準タイヤでも特に問題ないと思いました。ダホンは標準タイヤが微妙なことが多いのですが、このタイヤは不満を感じさせない走りだったように思います。

 それでも敢えてタイヤを交換するなら、これも定番ですがシュワルベ「ビッグアップル」が良さそう。積極的にグラベル攻めるモデルではないので舗装路での乗り心地や走行性を意識したタイヤが合うと思います。そもそも16インチタイヤに選択肢がないのでだいたい絞られてしまうのですが……。

 荒れた舗装路や未舗装箇所も走る機会が多いならシュワルベ「ビリーボンカーズ」でも良いと思います。こちらはダホン公式でもオプションとして認知されています。20インチミニベロで使用していますがオールラウンダーに使用できて良いタイヤだと思います。

走行性能・軽量性・価格のバランスが取れた良モデル

 K9Xに試乗した感想などつらつら書きましたが「折りたたみ自転車」として求められるものをほぼ全て網羅したかのような良いモデルと言えます。折り畳み機能を備えつつ9.5kgという軽量さ、16インチホイールとディスクブレーキによる走行性能の確保、その割には高過ぎない車体価格と全体的にバランスの取れた自転車です。現在、K9Xは軒並み入荷待ちという状況で予約しても2025年1月入荷らしいです。実際に試乗してみてそうなるのも頷けるモデルだと思いました。