JR西日本が2月3日に長野県松本市と新潟県糸魚川市を結ぶ大糸線一部区間(南小谷駅〜糸魚川駅)について長野県・新潟県の沿線自治体と協議を始めると発表。4日には信濃毎日新聞などが大糸線の利用促進について議論する「大糸線利用促進輸送強化期成同盟会」が新たな振興部会を3月に立ち上げると報じました。Yahooニュースにも出てきていました。
以前よりJR西日本はコロナ禍で経営状況が悪化していることもあり不採算路線の廃止を含めた見直しをすると表明しています。議論とは言っていますがJR西側としては廃止してバス転換に持っていきたいのだと思います。
個人的な気持ちとしては存続してほしいところです。この路線が消えると小谷村・糸魚川方面への輪行手段が消えてしまいます。後述のバス転換になった場合におそらく輪行は不可能でしょう。自走で行って帰ってくるのは骨が折れます。輪行を抜きにしても単純に車窓からの小谷村や糸魚川の景色が好きなのでそれが無くなるのは寂しすぎます。
しかしながら個人的な想いはともかくコロナ以外に色々条件が揃ってきたので今回の発表になったのでしょう。外堀が埋まってきたと言う表現がピッタリでしょうか。以下、ニュース等で得ている情報からの推察など思うことをつらつらと挙げてみます。
大糸北線(南小谷駅〜糸魚川駅)と沿線地域の厳しい現状
今回、議論の対象となる大糸線一部区間は南小谷駅〜糸魚川駅の「大糸北線」にあたる部分です。沿線地域をディスることを書きますが人口が少なく過疎地と言って差し支えない地域です。観光資源に恵まれているとも言えません。また、1995年(平成7年)の7.11水害が良い例ですが地形的に災害多発地域で水害や雪害に悩まされてきました。
電車については姫川が通る急峻な地形の関係から徐行区間が多く、走行距離に比して時間が非常にかかるなどはっきり言って自動車に負けます。松本駅から糸魚川駅に行く場合は大糸線を使うよりも篠ノ井線を使って長野駅で北陸新幹線に乗り換えた方が早いです(東京行くにも特急あずさよりこのルートが早い)。肝心の利用者数も1992年がピークだそうで現在ではそこから90%減という厳しすぎる状況です。
路線の営業を続けるにあたり判断材料になるのが沿線自治体の人口と利用者数です。その地域柄インバウンドと言った観光目的の利用があるにせよ「日常の利用者数」が見込めないことには安定的な営業が成り立ちません。他にも北陸新幹線開通により「飛び地路線」になっているのも響いているでしょう。それに関しても大糸北線の沿線地域は不安材料しかありません。
*余談ですが小谷村〜糸魚川区間でサイクルトレインやトラックで自転車を運ぶなどの取り組みもありました。サイクルトレインは昨年も実施していたようですが予約期間含め使いづらいと思ったのが正直なところ。また、大町市などで輪行袋の貸し出しサービスが過去に行われていました。当時、この話を聞いてポイントがズレているなと思いました。今後もこういう利用促進の取り組みをするのかわかりませんが、失礼ながらやるなら真面目にやってほしいなと思います。(リサーチとかの前段階でやることはもっとある)
今回のきっかけは「松本糸魚川連絡道路」と推察
これは私見ですが今回のプレスリリースのきっかけは「松本糸魚川連絡道路」だと思います。JR西としてはコロナ禍が背景にあるにせよ松本糸魚川連絡道路の話が具体化してきたことを受けて廃線協議の段階に進めると考えたのではないでしょうか。今回の発表も前々から相当練りに練ってタイミング含め準備をしてきたと思われます。
「松本糸魚川連絡道路」は長野県松本市から新潟県糸魚川市を結ぶ全長約100kmの「高規格道路」です。これが完成すると松本市〜糸魚川の区間を従来より短縮して移動可能になります。特に糸魚川・大北地域にとっては1995年(平成7年)の7.11水害など災害に見舞われており安定した交通手段確保は悲願でした。一方で沿線地域では自然・景観保護などの観点で反対運動があったりと火種になっています。
まだまだコースについて議論がされていますが事業を推し進めるのが既定路線になっているのが現在の状況です。この高規格道路が完成すればさらに大糸北線の存在意義は危うくなるでしょう。
バス転換も危ういと思われる
JR西が希望するであろう路線の廃止をした場合に「代替の交通手段」が交渉上必須となります。そこで挙がるのは「バス転換」ですがこれもどこまで担保されるかは甚だ疑問。
現在でも糸魚川バスと小谷村営バス(アルピコ交通が実質運行)が大糸北線区間を併走する形で運行していますが利用状況は観光シーズンや利用時間で不安定です。こちらも例に漏れずコロナ禍の影響を受けているでしょう。
長野県内の別地域の話ですが人口減とそれに伴う利用減からバス路線が廃止・縮小されたというケースも実際に見ています。最初は約束通りバス転換をしたとしても数年で廃止・縮小になる可能性も十分あります。鉄道路線が立ち行かなくなったエリアでバスがうまく行くなど夢物語なのは容易に察することができるでしょう。
大糸南線も厳しい状況
本記事では割愛しますが議論の対象から外れている大糸南線も一部区間は厳しい状況です。具体的には「信濃大町〜南小谷駅」の区間。主に大町市・白馬村エリアです。そして大糸北線とそのまま隣接する区間でもあります。(やっぱり「北」って寂れやすいんだよなぁ……)
なんとか存続してほしい
今まで数回ほど利用していますがこのエリアを鉄道旅できなくなると寂しいですし現実的に輪行手段も消えるので困ります。「塩の道」めぐりも頓挫する……。*
えちごトキめき鉄道に移管する案もありそうですが赤字路線を引き受ける体力があるとは思えません。JR東もそれは同じでしょう。そうなるとやはりバス転換(それすら維持が怪しい)なのか……。ただ、それを本当にやると人口減少・過疎化と負のスパイラル真っしぐらなんですけどね。管理者は異なりますが長野県北部の飯山線も非電化路線で似たような状況なので下手すると大糸北線が路線廃止時のモデルケースになってしまう可能性も。今年すぐにでも……ということは無いでしょうが塩の道や旧道巡りも早くした方が良さそうです。
*免許あるけどペーパーなので車は厳しいな……。