最近、ロードバイクでサイクリングをする際にはキャンプっぽいこともしたり、輪行で山道や砂利道を走る機会がそこそこあります。そういう遊び方をさらに快適かつ楽しくするために昨今話題の「グラベルロードバイク」としてKONAの「ROVE ST(2019モデル)」を納車しました。
本記事ではKONA ROVE STを選んだ理由や軽いインプレ・レビュー、殆ど情報がない本体重量etc・・・について触れたいと思います。
KONAはカナダのメーカーでマウンテンバイクで有名なメーカーです。そういうメーカーさんが出しているグラベルロード(KONAはアドベンチャーバイクと呼称)です。
日本は道路の舗装率が高いとはいえ砂利道等の未舗装路もそこそこ多く、ロードバイクの細めのタイヤだと足を取られたり走行自体が厳しい道もあります。
これまで実際にロードバイクで走行してタイヤの細さとリムブレーキでは分が悪いことは充分痛感しました。おっかなびっくり走るのでは無く「しっかりと砂利道を走破できる自転車」が欲しいと思うようになりました。
ロードバイクカテゴリでもTREKのドマーネ等ディスクブレーキ採用で太いタイヤを履いたものがありますが、すでにロードバイクを持っていることや「舗装路走行がメイン」かつ「輪行での遠征」も想定していることから「グラベルロードバイク」から探しました。マウンテンバイクだと流石に重くて輪行は厳しい・・・。
1年ほど色々と検討、実際に試乗するなどして候補を「JAMIS RENEGADE 」シリーズや「KONAのアドベンチャーバイク」に絞りました。
なぜ KONA ROVE STか?
長い前置きになりましたが後述の仕様・スペックを踏まえつつ「フレームのカラーリング」・「価格」でROVE STを購入しました。さらに言えば「実物がお店にあった」ことが決め手です。どれだけ候補に挙げようが実物が無ければ買えないですから。
デザインに関してはフルクロモリフレームの細いフレームデザインとカラーリング、太いタイヤの組み合わせが素敵だと思いました。特にカラーリングについては今まで黒系統の自転車ばかり乗っていたので新鮮な感覚です。こう言ってしまうと元も子もありませんが最終的には「見た目」で決断したということです。
あとはこちらの羊さん?などの遊び心のあるペイントとセンスも含めて面白みを感じたことも理由です。しかしながら、これは何の動物なんでしょう?羊?牛?
トップチューブのモデル名ロゴも「フォントもデザインのうち」という感じでセンスを感じます。
実はROVE STに目をつけた時には既にどこも在庫無しという状況でした(通販は対象外)。2020年モデルが発表されていましたがカラーリングの好みと後述のタイヤ仕様から購入は諦めていました。パープルも悪く無いけど欲を言えばグリーンが良いなぁ・・・というレベルです。でも、フォント周りとフロントフォーク裏のグラフィックは2020年がカッコいいと思う。
存在を知ったのが遅かったこともあり諦めていましたが某アウトドアメーカーで店頭に展示されているものをたまたま発見。しかも、私の身長に対応した50サイズも残っていました。さらに2020年モデルが発表に伴い「型落ちモデル」として値下がりしていました。私としてはカラーリングとタイヤの仕様は2019年モデルの方が好みだったので願ったり叶ったりの状況。こうして奇跡的な巡り合わせで入手できたわけです(他にも増税前ということも背中を押した形)。価格に関しては通常価格でも仕様からすれば非常に値頃感があると思います。
フルクロモリフレーム
フレーム素材については「クロモリフレーム一択」で探しました。単純に今までアルミとカーボンに乗ってきたので違うものに乗ってみたいというのが理由です。とは言え、今までの経験も踏まえての選択です。
初期の検討候補にキャニオン「グレイル」やTREK「チェックポイント」も入っていましたが跳ね石等でカーボンフレームにクラックが入らないかどうしても不安が拭えずカーボンモデルは見送りました。
実際にダート区間を走ると舗装路の比ではないくらいに石がフレーム下部に跳ねて当たってきます。重さと錆びやすさはネックですが、クロモリの強度はグラベル用途では安心材料になると思います。(フロントフォークのみカーボンの製品がありますがどう変わってくるのか試乗した範囲ではよくわかりませんでした・・・)
ディスクブレーキ
グラベルロードでディスクブレーキは必須です。リムブレーキと違い雨で濡れても制動力は大きく落ちません。リムブレーキモデルでダートを走るとブレーキに泥や雪、落ち葉等々が詰まってブレーキが機能しなくなるばかりかホイールの回転にも支障が出て大変危険です。こういった問題もディスクブレーキならほぼ回避できます。
ROVE STは「機械式ディスクブレーキ」を採用しています。ディスクブレーキでよく言われる「ブレーキの引きが軽くなる」・「ディスクブレーキにすると制動力が大幅に向上する」という謳い文句は「油圧式ディスクブレーキ」のことなのでROVE STには当てはまりません。レバーを引いた感触や効き具合はリムブレーキと大差ないように思います。油圧式モデルに試乗すればわかりますが、あちらはガツンとブレーキが効きます。ただ、ブレーキ本体は「フラットマウント方式」採用なので後々油圧式に換装することは可能です。
ブレーキについてはもう少し走り込んでみないと評価が難しいです。ただ、機械式はメンテの難易度が低いメリットがあります。ぼんやり検討している今後の運用方法的には機械式の方が都合が良いので今回の自転車選びにおいては問題になりませんでした。
「SRAM Rival 1」の軽いギア比
ROVE STはグラベルに特化した仕様としてSRAMのRival 1というコンポを採用しています。フロントシングル40Tとリア42T~11Tのワイドレシオ11段変速です。
日本のダート・グラベルエリアでは「激坂」は避けて通れません。また、バイクパッキングで大量の荷物を積載して走る場面もあります。そうなるとROVE STのような「軽いギア比」は必須です。
実際にロードバイクでダートを走った際もフロントは終始インナーで走っていました。また、「フロントシングル」であることも重要だと思います。他のグラベルロードでもフロントダブルは多くありますが、泥などの汚れが掃除しにくい等整備性に難があります。
シフト操作に関してはシマノと異なり「シフトレバーのみ」でシフトアップとダウンの操作を行います。シマノ のようにブレーキレバーは動きません。軽くレバーを動かすとシフトアップ、さらに深く押し込むとシフトダウンします。シフトチェンジはシマノのアルテグラや105が「カシャッ、カシャッ」という感触ですがこちらは「ガチャン、ガチャン」というメカメカしい感触です。シマノでも8速の「クラリス」などエントリーグレードがそんな感じの操作感です。この辺りのフィーリングは好みですね。操作自体はすぐに慣れるので問題ないと思います。
初スルーアクスル
自宅とお店が遠すぎたので流石に輪行で帰りました。初のスルーアクスルですが特に問題無く輪行袋にしまうことができました。むしろクイックリリース式よりちゃんと決まった位置にホイールをセットでき、輪行で付け外しするには都合が良いように思います。
スルーアクスルよりも気になったのがフロントシングル故に輪行時にフロントのチェーンが外れやすいこと。横置き輪行では使うことのない「エンド金具」でチェーンテンションを上げないとダメですね。
タイヤ
タイヤ周りは650Bホイールに「WTB BYWAY Road Plus TCS 650bx47」というタイヤを履いています。
他のグラベルロードではあまり見ないセンター部分がスリックになったものです。グラベルキングSKを使っていた経験からあまりゴツゴツしたブロックパターンのタイヤだと舗装路主体の走行には過剰。また、路面にグニグニ張り付く感じで抵抗になります。一方でこのタイヤはセンターがスリックタイヤみたいになっており舗装路走行時の抵抗は幾分マシになります。グラベル用途とはいえ舗装路を走る割合が多いのでこのタイヤを履いた2019年モデルに目をつけていたわけです。パナレーサーのスリックタイヤに交換してしまっても良いのですが、せっかくなのでこのタイヤでの走りがどういうものなのかをじっくり見定めたいと思います。
*後で知りましたがこのタイヤ単体だとなかなかのお値段です・・・。
ツーリング性能
ROVE STは「キャリア取り付け用のダボ穴(アイレット)」が多く設けられています。最近は目的地でコーヒーを淹れて休憩したり等キャンプ的なこともしているので「積載能力」は重要です。フロントフォークにもキャリアを取り付けるためのダボ穴があるのでテントやタープ類も運びやすくなります。
「グラベルロードバイク」を謳っていても各モデルでフロントフォークのダボ穴を始めとした積載能力には違いがあるのでよく確認しておく必要があると思います。特に最近増え始めた「ハイエンドカーボンフレームモデル」だとグラベルレース向けに振ったモデルが多いようです。2020年モデルではディスコンになった上位モデル「ROVE LTD」は同じROVEシリーズながらフロントフォークにダボ穴がありません。
車体の重量
この手のモデルに求めるのは間違いかもしれませんが、輪行もするので車体の重さは気になるところです。公式サイト含め車体重量の情報が皆無。誤差が出ますが手持ちの電子重量計で計測するとペダル抜きで10回ほど測って10.8kg~10.9kg前後を行ったり来たり…。ペダルも付けると吊るしのミニベロ(MuSP9)に近い重量感なので10.6kg~11kg?実際そんなところだと思います。軽量化を求める自転車ではないのですが輪行するには重いです。タイヤかチューブを変えればもう少し落とせる気がします。変えるならグラベルキングかな・・・。
(追記)
後日、初回点検時に計測してもらいました。ペダルやライトを装着した状態で11.16kgでした。これらの重量を単純に引くと「10.68kg」ということになりますが体感上もう少し重いです。大体感覚通りの結果でした。
実際に走ってみて
先述の通りROVE STは「フロントシングル40T×リア11T~42T」のワイドレシオ11段変速。この歯数からわかる方はわかると思いますがスピードは驚くほど出ません。ロードバイクのイメージで乗るとがっかりするレベルです。信号待ち中に出くわしたローディー達に発進とともに千切られました…。
標準巡航速度は時速22〜25kmが良いところだと思います。ロードバイクならギア3~4段目くらいで出す速度をROVE STだと7~8段目で出すことが可能です。巡航速度の感覚としてはスポーツタイプのミニベロと変わりません。しかし、これは「ロードバイクとの比較」という話。実際に山道やダート区間ではフロントはインナーしか使っていなかったので特に問題にはなりません。グラベル用途では「安定して走れる」ことが重要です。
ロードバイクやミニベロでは道路の段差等を「ガタガタガタッ!!」、「ガツンッ!!ガツンッ!!」と拾っていた衝撃がROVE STではマイルドになりました。とにかくフワフワした乗り心地です。これはフレームというよりはタイヤ幅と空気圧の影響が大きいと言えます。650Bホイールに47Cの幅広でボリューム感のあるタイヤの組み合わせは伊達ではないということでしょう。先にクロモリフレーム一択と書きましたが、「衝撃吸収」の部分に関してはフレーム素材より「タイヤ」が与える影響の方が大きいということがよくわかりました。
肝心の「砂利道走行」ですが手近なところで彩湖の砂利道を試しに走りました。同じ所をロードバイクで走ったことがありますがガツンと来る衝撃に耐えながらパンクしないよう気を使いながらおそるおそる走った記憶があります。
一方のROVE STでは通常の巡航速度でヌルヌルと進むことができました。
この程度の砂利道はROVE STにとって序の口という感じであっという間に走り切りました。これなら未舗装路もまともに走れます。このくらいの砂利道はロードバイクでも走ることはできますがパンクやバランスを崩す等のリスクの高さは段違いで躊躇します。「とりあえず走れる」と「普通に走れる」の差は大きいです。
サイクリング 中にこういった未舗装路を含む脇道に躊躇なく突っ込むことができるのはグラベルロードバイクの走破性ならではだと思います。
「WTB BYWAY Road Plus TCS 650bx47」は適正空気圧が「2.4~3.5bar」とのこと。舗装路メインだったので3.0barで空気を入れて走りましたが砂利道では若干「ポンポン跳ねる感覚」がありました。どういう道を走るかによりますがもう少し減らした方がグリップが良くなりそうです。
速く走る以外の楽しさを手に入れる
私は未舗装路の走行やキャンプをとっかかりに2台目のロードバイクとしてROVE STを購入しました(すでに持っているミニベロはカウントしません)。すでにロードバイクを持っていて「2台目」として選ぶのであればROVE STのような「グラベルに特化」するなど突き抜けたモデルを選ぶ方が差別化できます。
単純な「舗装路での走行性能」はロードバイクに劣りますが、ロードバイクとマウンテンバイクの中間ともいえる「中途半端な仕様」が様々な走行場面にマッチすると感じました。「砂利道」はもちろん「荒れた舗装路」や「雨天時」でも走破できるまさに「オールラウンダーバイク」と言えます。街でロードバイクに乗っている人を見かけますが、ロードバイクよりもこういう多用途に使えるバイクの方が向いていると思います。(どちらかと言えばニカシオSEみたいなモデルが向いている)
実際に乗ってみてロードバイクとはまた違う世界が広がっていく感覚、ただ速く走る以外の楽しさや遊びを手に入れることができるのが「グラベルロードバイク」なのだと思いました。
*コスパ的にも全力でオススメしたいグラベルロードですが毎年早期に完売するモデルです。もしも購入を迷っている方で運良く在庫を見つけてしまったら買ってしまうことをオススメします。
追記として全モデルかはわかりませんが写真のような取り扱い説明書が付いてきました。「説明書なんてどの自転車にも付いてくるだろう」と思うでしょうが、使用方法以外にも自転車の交通ルールや各フレーム素材特性・製品寿命の説明等々幅広く記載されています。
基本的なスポーツタイプ自転車の「乗り降り」や「シフトチェンジのタイミング」といった自転車操作方法ではなく「ライディングテクニック」の部分や各カテゴリーの自転車についての説明もあります。
自転車選びの参考になる内容だったので買う前に読ませてほしいと思う説明書でした。